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ハイパーインフレとは?
物価が高騰して、お金の価値が著しく低下してしまう現象をハイパーインフレーションと呼びます。
2012年から始まったアベノミクス一本目の矢、大胆な金融政策が実施された時、多くの経済学者は『日本でハイパーインフレが起こる』と金融緩和を批判しました。
参考記事:大胆な金融政策とは?
しかし、その後もハイパーインフレが起こる気配はまったくありません。
ハイパーインフレの定義は、経済学者フィリップ・ケーガンによると
インフレ率が毎月50%を超えること
国際会計基準の定めでは、
3年間で累計100%以上の物価上昇
と定義づけされています。
一方で、日本のインフレ率は未だに年率1%にも及びません。
日本はハイパーインフレのリスクよりもデフレでの経済衰退のリスクのほうが比較にならない位に大きい状態です。
参考記事:失われた20年とは?
当記事では、本当のハイパーインフレーションとはどういうものなのか?
その歴史と原因、対策に迫ります。
ハイパーインフレの原因は?
ハイパーインフレの原因は至ってシンプルで、これしかないと言っていいでしょう。
●国の生産力の崩壊
●国によるマネーの供給過剰
これらが起こる要因はこのような事が考えられます。
●戦争や内戦で、国内の生産能力がダメージを受けて物資が不足してしまう。
●国家存続、財政破綻の危惧により、通貨への信用が失墜する。
●資金が必要となり、金融政策によって過剰に紙幣を発行してしまう。
国家の信用が戦争などによって毀損た場合を除いては、国内における物量と貨幣量のバランスが崩れ、需給バランスが崩れてしまう事がインフレの原因です。
参考記事: インフレの原因と対策
このように
『国家の信用の没落』
『物資の不足』
この二つ以外に、ハイパーインフレの原因は見当たりません。
それでは次に、世界の歴史上でのハイパーインフレーションを見ていきましょう。
世界のハイパーインフレ
世界の歴史上、ハイパーインフレは至る所で発生してきました。
ここでは、その一部を紹介します。
第一次大戦後のドイツ

画像:価値がなくなった紙幣をおもちゃにして遊ぶ子供
歴史上のハイパーインフレと聞いて一番先に思い浮かぶのが、この第一次大戦後のドイツではないでしょうか?
当時のドイツをハイパーインフレに導いた原因は、ベルサイユ条約によって決定した戦勝国への賠償金でした。
賠償額は1320億マルクで、ドイツ税収の10年分に相当するといわれています。
ただでさえ戦争によって、国内の生産能力が低下して物資が不足していたドイツです。
そんな状態で、賠償金を支払う為に中央銀行が貨幣を大量に発行したのです。
インフレが起きて当然です。
さらに、当時の世界各国では金本位制をとっていました。
賠償金も金(きん)で返す必要がありましたが、貨幣を発行する為には金(きん)の存在が価値の裏付けとして必要です。(金本位制と変動相場制に関しては後日記事にします。)
ところが、金(きん)の量には限界がある為に、価値の裏付けが取れない通貨への信用は地に付すことになります。
これが、ドイツのハイパーインフレに拍車をかけ、最終的にドイツの物価は384億倍に高騰したと言われています。
【ドイツハイパーインフレの原因】
賠償金支払いの為の貨幣の発行と信用の失墜
ハンガリー
第一次、第二次大戦後の二回に渡ってハイパーインフレに見舞われたハンガリーですが、特に2回目のインフレ率はギネス認定されており、史上最高のインフレ率を記録しました。
時は第二次世界大戦の終結後、ドイツに大きく依存し過ぎたハンガリー経済は、ドイツの敗北とともに壊滅的な状況になります。
ソ連の侵攻を受け、臨時政府へと移行した1946年からハンガリーにとって2回目のハイパーインフレが発生しました。
インフレ率はたった半年で1垓(がい)倍以上にも及んだと言われています。
とてつもないインフレです。
【ハンガリーハイパーインフレの原因】
物資不足に加え、敗戦による国家存続の危機によって通貨価値が失墜した。
ジンバブエ共和国

まだ記憶に新しい出来事では、ジンバブエのハイパーインフレがあります。
こちらは、政府の経済政策音痴が招いた典型的なハイパーインフレと言えます。
ジンバブエのハイパーインフレは2007年頃にピークに達し、前年比にして7634%までに及びました。
原因は以下のようにまとめられます。
①農地の強制収用によって、農産物の生産が低下
②株式の強制譲渡によって外資系企業が撤退し、生産力が低下
③インフレ抑制の為に行った価格統制が企業倒産を招き、生産力が激減
この①も②も③も、すべてジンバブエ政府の政策によるもので、経済音痴にも程があるといった内容です。
さらに、ジンバブエ政府は公務員の給与をあげる為に貨幣を大量に発行しました。これによって、インフレは加速していきます。
また、黒人優遇策をとったムカベ政権は、白人から農地や株式を没収し、資産の黒人以降を図りました。
しかし、多くの白人が国外へ撤退した結果、生産能力が著しく低下したのです。
例えば、農地を黒人へ渡した事はいいものの、一方で白人が持つ農業のノウハウを手放す結果となりました。
これによって、農産物の生産が低下し、価格が急上昇したのです。
そして、ジンバブエのハイパーインフレを決定的にした出来事が、2007年に行われた価格統制でした。
ジンバブエ政府は、国内のハイパーインフレを抑える為に、「ほぼ全ての製品・サービスの価格を強制的に半額にする」という法律を作ります。
しかし、これは経済の基本を完全に無視した失策でしかありません。
無理に商品を半額で売らせてしまえば、企業や小売店において利益が出るはずがありません。
当然多くの企業は赤字になり、そのまま倒産してしまいます。
企業が次々と倒産した結果、ジンバブエの生産能力はさらに低下し、ハイパーインフレが止まらなくなったのです。
日本にハイパーインフレの可能性はある?

失われた20年、長らくデフレに苦しんだ我が国日本は、アベノミクスの大胆な金融政策、あるいは財政破綻によってハイパーインフレが起こる可能性はあるのでしょうか?【金融政策とは?】わかりやすく解説
主に日本で警戒されているハイパーインフレの原因については二通りしかありません。
一つづつ検証してみましょう。
国家財政の破綻によって通貨の信認が失われる
日本は借金大国であり、このまま政府の借金が膨れ上がれば、財政は破綻をして日本円の信用は失われる。
そうなれば、国債価格が暴落し、ハイパーインフレーションに見舞われるという懸念です。
この財政破綻に関する私の見解と対処法はすでにいくつかの記事に記してありますのでそちらを参照にしていただきたいと思いますが、一言で言えば財政破綻によるハイパーインフレの可能性は2019年現在では極めて低いと言えます。
日本政府の借金は、財政破綻したギリシャのように外国から借りていた借金とは性質が異なります。
そうです。
日本の借金は自国通貨建てで国内で消化されており、日本政府にお金を貸しているのは日本国民だという事です。
結論として、財政破綻によってハイパーインフレが起こるという日本経済への批判は、極めて誤った認識であり、ただ国民の不安を煽る為の価値しかないという事です。
大胆な金融政策によってハイパーインフレが起こる
こちらもアベノミクス初期によく聞かれた批判です。
大胆な金融政策とは、通貨の供給量を従来に比べて大幅に増やす政策です。
確かに、長引くデフレ経済から脱却する為にインフレ転換させる為に行われたもので、ハイパーインフレの可能性がゼロとは言えません。
しかし、アベノミクスによる大胆な金融政策では、同時にインフレターゲットと呼ばれる物価目標を設定しました。
いわゆるリフレ政策です。
この手法は、金融緩和を行い通貨供給量を拡大して、世の中のインフレ期待を高めます。
実際にインフレに転換して、マイルドなインフレ状態に持っていく事によって経済を好循環させるのですが、物価目標に達した時点で金融緩和路線を転換させます。
このように、過度なインフレを防ぎながら金融政策を行なっていくアベノミクスの金融緩和政策においては、ハイパーインフレの可能性はゼロに近いと言えます。
ましてや、長引くデフレが日本経済停滞の原因であり、デフレから脱却しなければハイパーインフレも何もあったものではありません。
2019年現在、アベノミクス発動から約6年が過ぎましたが、未だに2%のインフレ目標にも程遠いのが現実です。
経済政策の失敗は人を殺す
わずかではありますが、ハイパーインフレを紹介しました。
ここから、経済政策の失敗は簡単に人を殺めてしまう可能性を秘めている事がお分かりいただけたと思います。
実際に現在も尚、ハイパーインフレに苦しむベネズエラでは、治安の悪化から殺人、略奪、強盗が蔓延しています。
一方で、日本の長引くデフレ経済においても、10年間で約10万人に及ぶ経済苦による自殺者を出してしまいました。
日本政府と日本銀行の金融政策の失敗によって、死者が出てしまっているのです。
この自殺者数は、日露戦争の戦死者8万5000人を上回ります。【失われた20年】〜世界最下位の真実〜
世界のハイパーインフレの歴史から、我が国が学ぶことは沢山あると私は考えています。
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