【売り手市場はなぜ生まれたのか?】わかりやすく解説

売り手市場が生まれた理由

 

空前の売り手市場

2019年8月に発表された7月の完全失業率は2.2%と、空前の売り手市場が継続しているといったニュースが世間を賑わせました。

 

画像:日本経済新聞電子版

総務省が30日発表した7月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は2.2%で前月比0.1ポイント低下だった。QUICKがまとめた市場予想の中央値は2.3%だった。

完全失業者数(同)は154万人で、7万人減少した。うち勤務先の都合や定年退職など「非自発的な離職」は1万人減、「自発的な離職」は1万人増だった。就業者数(同)は6716万人で15万人増加した。 

引用元:日本経済新聞電子版

 

単月の失業率とは言え、2.2%という数字はバブル期なみの低水準と言える状況が続いています。

 

画像:ガベージニュース

91年のバブル崩壊以降、失われた20年とともに上がり続けてきた失業率の転機はグラフの二つ目の山、リーマン・ショックの少し後です。

なぜ、このような状況が生まれたのかを当記事では解説していきます。

 

売り手市場と買い手市場

 

「売り手市場」とは、企業の求人数(需要量)に対して、学生の数(供給量)が少ないということです。

つまり、売り手市場は就活をする側に優位な状況と言えます。

反対に、採用を求める企業の数が職を求める人よりも少ない場合には「買い手市場」となります。

企業側に優位な状況となるのです。

失業率が改善する売り手市場は、一般的に好景気と言えます。

反対に、失業率が悪化する買い手市場は不景気と関係が強く、ブラック企業も横行するのです。

 

なぜ失業率は改善したのか?

 

それでは前述した失業率の転機、2012年頃には日本経済に一体何が起こったのでしょうか?

それは、アベノミクスによる金融緩和政策です。アベノミクスをわかりやすく解説

リンク記事でも紹介した通り、デフレ不況期における金融緩和政策は雇用を回復させる効果があるのです。

メカニズムを極端な程にシンプルに書くとこうなります。

 

輸出企業のケース

金融緩和政策によって、世の中のお金の量を増やす事を発表して、インフレへの期待を高める。

価値が目減りする可能性が高まる為、円が売られ円高が是正される。

円安によって輸出企業の業績改善予想が生まれ、株価が上がる。

【結果】

さらなる業績拡大が確実視される事で、輸出企業は求人を拡大する。

雇用が増えて、失業率が改善する。

 

これが金融緩和政策による為替レートの自国通貨安傾向が起こす失業率改善のプロセスです。

 

次は内需の拡大に伴う雇用の改善を見ていきます。

 

内需拡大のケース

金融緩和政策によって、世の中のお金の量を増やす事を発表して、インフレへの期待を高める。

 

物価上昇によって目減りする円の価値が、世の中の個人消費を増加させる。(早く物を買っておく事が合理的)

 

消費が活発化して企業業績が拡大し、企業は人手不足となり求人を拡大する。

 

【結果】

さらなる業績拡大が確実視される事で、国内企業は求人を拡大する。

雇用が増えて、失業率が改善する。

 

このように、国内内需の拡大も金融緩和政策によって起こります。

 

インフレへの期待感が雇用を活性化する

 

日経平均株価と就業者数

 

画像:高橋洋一氏作成

 

これは、日経平均株価と半年後の就業者数をプロットしたグラフです。

この二つの指標は見事にリンクしており、相関係数も0.88と強く相関しています。(一般的に0.6以上の相関係数は、強い相関が認められます。)

 

つまり、アベノミクスの第1本目の矢である大胆な金融緩和政策がもたらした株高が、雇用情勢を好転させたと言えるのです。

 

日経平均株価とインフレ期待

 

金融緩和政策が株高をもたらすプロセスは前述した通りです。

ただ、金融緩和政策が雇用に好循環させる入り口としては、インフレに対する期待を形成する事が不可欠なのです。

 

金融緩和政策の大まかなプロセスはこの図に集約されます。

 

 

上記のプロセスの中で、日経平均株価の上昇は資産価格の上昇にあたります。

その前には予想インフレ率の上昇が確認できるでしょう。

これが、インフレ期待が高まっているという事であり、市場のインフレ期待が高まれば企業は沢山の人を雇って、業績拡大を目指すようになるという事です。

 

つまり、アベノミクスの醍醐味である金融緩和政策は、日本銀行のインフレ目標へのコミットメント(デフレ脱却への意思表示)とマネタリーベースの拡大(円を大量に発行する)が、日本の雇用情勢を大転換させたと言えるのです。

 

これからの雇用市場

 

日本のリスク

オリンピックと消費税10%への増税を控える日本の今はは、期待とリスクの双方を持っています。

【消費税10%への増税は日本経済を破壊する】

 

アベノミクス開始以降、引き続き雇用情勢は良好な状態です。

これからの日本の雇用情勢も果たしてこの状態が続いてくれるのでしょうか?

 

当記事をご覧いただいている方はお分かりかと思いますが、これからの日本の雇用市場は買い手市場に傾き、景気が大きく後退するリスクを持っていると言えます。

私が考える日本経済が持つリスクを、深刻な順に並べると以下のようになります。

 

消費税率10%への引き上げによって、個人消費に深刻なダメージを与える事

 

アベノミクス終了後の金融政策、継続した財政政策の緊縮化

 

米中貿易戦争による世界的不況の到来

 

イギリスのEU離脱による世界的不況の到来

 

 

直近ではこの4つが挙げられます。

 

特に、消費税率の引き上げ路線は、89年の消費税の導入から続く緊縮財政政策は、財務省の主導の元で現在においても留まるところを知りません。

この緊縮路線を是正しなければ、日本の雇用情勢、そして景気が明確に回復する事は難しいでしょう。

 

経済政策を理解し、緊縮政策に反対する

 

安倍政権によって金融政策が緩和路線へと大きく転換しましたが、財政政策の緊縮財政を転換する事はできませんでした。

また、金融政策の緩和路線も首相が変わって仕舞えばどうなるかも不透明のままです。

何故なら、政財界は一貫して金融財政を緊縮に向けることに親和的な姿勢だからです。

なぜ財務省は緊縮財政を止めないのか?

このままでは、いつまで経っても日本は経済的に浮上する事はできません。

 

なぜ安倍晋三首相が、ここまでの長期政権を築けたかは、実は一言で説明できるのです。

 

それは、雇用を拡大させたからです。

 

政治家の本来の仕事は、国民を食べさせて国を豊かにする事、つまりまずは雇用を創出する事なのです。

バブル崩壊以降、日本の首相がコロコロと交代したのは、ことごとく雇用を生み出す事に失敗し、デフレ不況を続けてきたからなのです。

安倍晋三首相は、第一次安倍政権が退陣に追い込まれた際に、日本銀行が金融引き締め政策に転換し、不景気に転落した末の出来事だった事をしっかりと理解していました。

 

そして、政権交代後の民主党政権がリーマン・ショックによる景気低迷に対して何も出来なかった末に、安倍政権が返り咲いたのです。

 

この時、安倍政権が掲げた経済政策がアベノミクス であり、金融緩和政策であり、雇用拡大政策なのです。

 

しかし、まだまだ世論は金融緩和や積極財政に対して厳しいまなざしを向けてしまいます。

【金融緩和はマネーをジャブジャブにさせて円の信用を低下させる】

【公共事業の無駄を省き、社会保障に回せ。】

この様な声は、各方面から聴こえてきます。

 

しかし、日本がしっかりとデフレを脱却して、雇用の拡大を確保する為には、この緊縮政策に対しては警戒しなければいけません。

 

これには、私たち日本国民一人ひとりが、経済学のあらましを理解して、チープな批判に惑わされないリテラシーを身につける事が喫緊の課題であると私は考えています。


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