目次
バランスシートとは?
貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)とは、財務諸表の一つ。バランスシート(balance sheet、略称B/S)とも呼ばれる。
Wikipediaより引用
銀行が企業に融資をする時には、融資先の企業の経営状況を必ず確認します。
企業は経営状況の証明に財務諸表を活用します、内容は大きく下記の3つの項目にわかれます。
①貸借対照表(バランスシート・B/S)
②損益計算書(P/L)
③キャッシュフロー計算書(C/S)
【関連記事】損益計算書(P/L)
【関連記事】キャッシュフロー計算書
当記事ではこの1番目である貸借対照表(以下バランスシートと記載)について、わかりやすく解説します。
バランスシートからわかること

バランスシートを見れば、対象の企業について以下のことがわかります。
✅どんな資産を持っているか
(資本の運用状況)
✅どうやって資産の元となる資金を集めたか
(資本の調達状況)
バランスシートは
『どんな資産を持っているか』を左側に
『どうやって資金を調達したか』を右側
に記載し、その左右の数字は一致します。
例えば、あなたが美容院を開業しようとしていると仮定して解説します。
あなたは銀行から借りた300万円と貯金の200万円、合計500万円のお金を開業資金に充てました。
500万円の軍資金で物件を契約し、内装工事をしました。
その時の状況をバランスシートに当てはまるとこうなります。

このように資産と負債は一致し、あなたが調達した資金がどうやって運用されたのかが明確にわかるようになります。
その後、あなたの美容院が繁盛して利益を積み重ねていく事ができれば右下の純資産の部分が拡大していきます。
利益が拡大し続ければ、例えばもう1店舗出す為の必要資金も調達しやすくなります。
例えば銀行からさらなる融資を受けたいと考えている場合に、バランスシートは利益拡大の証明となりますので、銀行はあなたの事業を信用してくれるでしょう。
バランスシートの見方は?

前項のおさらいです。
バランスシートは左側に資本の運用状況(会社の資産)を、右側には資本の調達方法を記載します。
そして上記のように、『調達した資本』は2つに分かれます。
他人資本‥‥返済義務のある資本
自己資本‥‥返済義務のない資本
さて、バランスシートの大枠が理解できたところで、その内訳を見ていきましょう。
上記のように資産は、現金化(資金の回収)に要する時間の長短で、負債は返済に要する時間の長短で、流動と固定に分かれます。
✅流動資産
一年以内に現金化されるものや現金の変わりになるもの
✅固定資産
現金化に一年以上かかるもの
✅流動負債
一年以内に支払う予定のもの
✅固定負債
一年以上の時間をかけて返済する予定のもの
純資産(自己資本)は、返済する必要がない資本が記載されます。

具体的に※勘定科目を入れると以下のようになります。

※勘定科目とは
勘定科目(かんじょうかもく、英: account, account title)とは、複式簿記の仕訳や財務諸表などに用いる表示金額の内容を示す名称のことである。
Wikipediaより引用
このように、現金や預金は1番流動性の高い資産として資産の部に記載され、土地や建物は現金化がしづらい資産となり、長期的に事業で活用することで利益として回収する為、固定負債に記載されます。
このようにバランスシートは、その時点の事業の事業の状況をくっきりと浮き出してくれます。
【まとめ】

バランスシートの実際


このバランスシートは航空会社大手のANAの2020年の決算書から引用しました。
上場企業は四半期に一回、必ずバランスシートを含めた決算書を証券取引所に提出しなければいけません。
なぜなら市場の投資家は、この財務諸表を自らの投資判断に大きく活用するからです。
このバランスシートを含めた財務諸表を読み解けるようになれば、株式投資や資産運用にも大きく活用できるでしょう。
一方で私たち投資家は、少なくないお金をこの財務諸表を基にして投資活動をおこないますので、粉飾決算などの行為は極めて重い犯罪となります。
さて、この航空会社ANAのバランスシートには、1兆円を超える固定資産の航空機があります。
このように、勘定科目は企業によって実に多くの種類があります。
また、バランスシートからは
✅どのくらい利益を積み上げてきている?
✅在庫はどのくらい抱えている?
✅従業員に退職金はどのくらい出している?
その他にも、バランスシートを通して多くの事業に関する情報を読みとる事ができます。
また、多くの企業のバランスシートを見れば見るほどそれぞれの企業の特徴や、業種の特徴、ビジネスモデルの内側が見えてきます。
バランスシートを読みとく力は、現代のビジネスパーソンはもちろん、株式投資や資産運用を考えている人にも大きな力を貸してくれるでしょう。
国の財政問題をバランスシートから検証

国民一人あたりの借金は1000万円?
当サイトでは、さまざまな記事で日本の財政問題についての誤解を取りあげてきました。
ここで、バランスシートを理解した上での国の借金問題について考えてみしょう。
下記はNHKニュースからの引用です。
国の借金1114兆円で過去最大 国債や借入金など
国債や借入金などを合わせたいわゆる「国の借金」は、ことし3月末の時点で1114兆円余りとなり、過去最大を更新しました。
財務省によりますと、国債と借入金、政府短期証券を合わせた政府の債務、いわゆる「国の借金」は3月末の時点で1114兆5400億円となりました。
1年前よりも11兆1856億円増えて、4年連続で過去最大を更新しました。
引用元:NHKニュース
メディアではこのような国民の不安を煽るような論調が主流であり、ひどいものでは『国民一人あたり〇〇円の借金を背負う』といったトンチンカンな表現までなされています。
皆さんも一度は耳にしているのではないでしょうか?
さて、バランスシートを習得した方には一つの疑問が出てくるでしょう。
『借金はわかったけど
日本政府の資産どのくらいあるの?』
借金だけを強調する事は公平性に欠ける報道ではないでしょうか?
また、当然ですが政府の借金には貸し手がいる人がいるはずです。
外国でしょうか?
実は私たち日本国民なのです。
政府負債とは私たち日本国民の借金ではなく債権なのです。※さらに詳しくはリンク記事を参照ください。
日本政府のバランスシート
それでは日本政府のバランスシートを見てみましょう。

財務省ホームページ(平成30年連結財務書類)と日本銀行のホームページ(第134回事業年度財務諸表等 )を基に筆者が作成しました。
そもそも日本政府の連結バランスシートに日本政府の子会社である日本銀行の記載がないのが不思議ですが、合わせると上記のようになります。
またこのバランスシートを見る上では注意点があります。
日本政府は
日銀への負債は返す必要がありません
もちろん、日銀への負債には金利もかかりません。
つまり日銀の負債は事実上、日本政府にとっては自己資本と言ってもいいでしょう。
そしてその気になれば日銀は、日本政府の負債(日本国債)を買い取る事も出来ます。

これを行っていたのが2012年から開始されたアベノミクスであり、実はあの時から急速に日本の財政再建は進んだといえるのです。
結局、国家財政は大丈夫?

つまり日本の国家財政は大丈夫です。
マスコミが煽るほどに危機的な状況ではありませんし、バランスシートをみる限りとても危機的な状況とは言えません。
政府資産1569兆円
政府負債1517兆円
本当に危険なのは、これらの煽りから緊縮財政によって経済政策を間違えてしまい日本経済自体が縮小してしまう事なのです。
マクロ経済政策に関しては関連記事にて解説しておりますので、興味のある方はぜひご覧ください。(※青文字をクリックすればリンク記事に飛べます)
いずれにせよ、このようなバランスシートへの知識は、さまざまファイナンシャルの場面であなたの理解度を深める助けになってくれるでしょう。
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