目次
右翼と左翼の違いとは?
✅本記事ではこんな疑問にお答えします

「右翼」は保守的・国粋主義的な思想傾向、またはその立場に立つ人や団体のこと。
「左翼」は急進的・革命的な政治勢力や人物、ことに社会主義または共産主義的傾向の人や団体のこと。
(参考『大辞林・第三版』松村明・編、三省堂)
名前の由来

画像 フランス革命 wikipedia
右翼と左翼の名前の由来は、フランス革命時の議会の座席配置にあります。

議長から見て、権力側である王党派(体制派)が右に、革命派(反体制派)が左に位置していました。
この事から、右翼と左翼は現代においても下記のように分類されています。
【右翼】
保守・体制派・国家主義
国柄や伝統、慣習を重視
【左翼】
革新・反体制派・反国家主義
既成の体制や文化を否定
右翼と左翼の立ち位置
まず初めに、左右の主義や立ち位置をざっくりと分けて図にまとめます。

このように左右で対立する考え方(体制派と反体制派など)もあれば、似ている部分(社会主義と国家社会主義)もあります。
『体制』は、時代によって変わることも多く、現代の左右の立場を理解する前提として、左右の立ち位置は
国柄や時代によって変化する
ということを押さえておきましょう。
まずは、右翼と左翼についての決定的な違いから解説します。
左右の決定的な違い
日本の左翼と右翼に決定的な違いがあるとすれば下記の2点でしょう。
①日本の皇室
②憲法9条への見方
①:日本の皇室
右翼:親天皇
左翼:反天皇
反体制派の左翼は、『天皇の存在は国民主権に反する』として打倒天皇制を掲げています。
一方で体制派の右翼は、天皇や皇室に敬意を払い、その存在は日本の文化であると主張しています。
右翼的思想を持った文学者、三島由紀夫はかつて東大全共闘との討論でこう発言していました。
『つまり諸君が天皇を天皇だと、ひと言言ってくれれば、俺は喜んで諸君と手をつなぐのに、言ってくれないから、いつまで経っても殺す殺すと言っているだけのことさ。それだけさ』
![]()
右翼と左翼は似かよった思想も持つ一方で、天皇・皇室に対する立場はには決定的な違いであり、時代が変わった今もなお対立し続けています。
これは日本国にとって天皇は、伝統であり歴史であり、文化そのものであったと言いかえることができるのかもしれません。
②:憲法9条への見方
右翼:軍事力・防衛力の保持
左翼:軍事力・防衛力の破棄
もう一つ、右翼と左翼は『武力』に対する立ち位置が明確に違います。
左翼は、武力放棄を掲げた憲法9条を『平和憲法』と位置づけ、日本国憲法を守る事を主張します。
つまり、武力を放棄して戦争をなくそうという理想です。
一方で右翼は、いわゆる平和憲法は日本がアメリカから押しつけられた憲法であるとして、自主憲法の制定や日本の軍事的独立を主張しています。
つまり、軍事力を強化させて日本を守ろうという事です。
リベラルと保守
現代日本で『右翼』『左翼』と表現するときには、『過激思想のニュアンス』を含んでいます。
ただ、右翼の中でも左派的な考え方を持つ人、左翼の中でも右派的を持つ人まで幅広く存在します。
左右の穏健派を表すときには、一般的に民主主義や自由を尊重する人を『リベラル』とよび、民主主義や伝統を尊重する人を『保守』とよぶことがあります。

左翼 = 共産主義・無政府主義
リベラル = 社会民主主義・自由主義
保守 = 保守自由主義・自由主義
右翼 = 国家社会主義
この相関図をよく見ると、その中心近辺は穏健派で端に行くほど過激派(理想主義)になるといった関係が見て取れます。(リベラルは社会民主主義、保守は保守自由主義に分類されます)
前述したように、右翼の反米主義と左翼の反米主義は、武力に関する立場の違いはあれど、極端な根底の思想は似ているという法則があり、この法則は後述する左右の経済観を理解する時に活用できます。
(※リベラルや保守の名称は、比較的穏健派に使用されることが多いですが、さまざまな場面で多様な使い方をされるため、これらの定義を保証するものではありません。)
右翼と左翼の経済観
それでは左右の思想の違いを経済政策的視点で見てみましょう。
日本での極端な思想を持つ右翼と左翼は、実は主張が酷似しており、経済政策的視点からみるとよりクリアに理解できます。
極端な思想と計画経済
極端な左右の思想はどちらも計画経済を採用しており、資本主義を否定しています。
【参考記事】共産主義について
【参考記事】資本主義について
計画経済とは自由な市場の価格決定メカニズムを否定して、国家の計画によって資本を配分する経済システムであり、代表的なものに共産主義や国家社会主義があります。
日本における右翼と左翼の歴史は、経済的視点においての主張がほぼ同じです。
左翼=共産主義=反資本主義
一方の、過激な右翼は
右翼=国家社会主義=反資本主義
このように、共産主義(左翼)と国家社会主義(右翼)は兄弟のようなものです。
たとええば日本の戦況が悪化し、大陸派右翼が勢力を増した第2次世界大戦中は、国家総動員法の制定によって資源の配分は統制され、食料物資も配給制となり統制経済移行しました。
紛れもなく大陸派右翼の台頭した戦時体制は社会主義、全体主義、そして統制経済の発想です。
ゲルマン民族優位主義を掲げたナチスドイツも国家社会主義の政治体制を標榜していました。
彼らもまた、社会主義(共産主義)を掲げているのです。
ここで私が言いたい事は
右翼と左翼は対極の思想ではなく、極端になる程に親和性を帯びていくと言う事です。
極端な左翼思想=極端な右翼思想
極端な思想は、統制をもってしか実現しない以上、私たちの自由を奪います。
つまり、全体主義は計画経済や統制経済と、民主主義は資本主義と親和性が高いのです。
当サイトは統制経済には懐疑的な立場であり、日本の未来を明るくするには自由は経済活動が必須条件と考えています。
ですので、左右の極端な思想の対極に位置する立ち位置が『保守』であり、『自由主義』であり、『現実主義』だと私は考えています。
右派の左派の経済観分類
ここではさらに踏み込んで、一般的な『経済右派と経済左派』について解説します。
マクロ経済政策で見れば、右派と左派はこのように分類されます。
●経済右派
・小さな政府・民営化
・自国通貨の防衛・金融引き締め
・財政規律の重視
●経済左派
・大きな政府・公共事業
・自国通貨供給・金融拡張
・社会保障の重視
世界標準的な右派と左派の経済政策は、上記のように分類されるのが一般的であり、政治思想と経済思想は一致する傾向があります。
しかし、日本では政治経済の左右思想は必ずしも一致しません。
日本では戦後、55年体制と呼ばれる保守政党(自由民主党・右派)の下で経済成長を遂げました。
この右派政党が、経済左派の政策によって世界第2位の経済大国までのぼりつめたのです。
なぜなら戦後の日本は世界がうらやむ国民皆保険制度を作り『世界で唯一の社会主義が成功した国』といわれる程に貧富の格差を縮小したからです。
格差是正のための社会保障の拡充や、大きな政府の象徴である公共投資によって、戦後の日本は経済成長を遂げました。
【補足記事】
そして、その左派的な経済政策を担ってきたのは右派政党である自由民主党です。
これが、経済における世界と日本の左右の政策認識を複雑化させている要因の一つだと考えています。
2013年から開始されたアベノミクスも左派的な経済政策に当てはまります。
【アベノミクス三本の矢】
●金融緩和政策
参考記事:▶▶大胆な金融政策
● 積極財政政策
参考記事:▶▶財政政策とは?
● 規制緩和政策
アベノミクスは世界標準では左派的な経済政策なのです。
結局は財政政策の拡張に失敗してやや不発のアベノミクスですが、一部から『右翼』と批判される安倍政権が、実は左派的な経済政策を実施しているのです。
大胆な金融政策は雇用を改善させて労働者を救うこととなりましたが、寂しいことに日本の左派(野党やメディア)の大部分が、弱者を救う経済政策に大反対していました。
✔️ 右翼と左翼の経済観
右翼 = 資本主義
参考記事:資本主義についてわかりやすく解説
左翼 = 共産主義
参考記事:共産主義についてわかりやすく解説

第2次世界大戦で変化した右翼と左翼

画像:Wikipediaより引用
ここからはさらに深く、右翼と左翼の内情や歴史について解説します。
1945年、第2次世界大戦の敗戦を経験してから、日本の体制は大きく変わりました。
これは同時に、日本の体制派の位置付けも大きく変わったことを意味しています。
なぜなら敗戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)が日本の占領政策をおこない、日本の主導権はアメリカに大きく傾いたからです。
つまり
①:『日米同盟体制を維持する戦後の体制派』
➠親米右翼
②:『日米同盟体制を破棄して日本の独立を目指す戦前の体制派』
➠反米右翼
このどちらも体制派であり、右翼ということができます。

日本の戦後右翼の分類を大きくまとめると
①:親米右翼
日米同盟を基軸として
日本の伝統や文化を守る立場
②:反米右翼
日米同盟を破棄して(日本の自主独立)
日本の伝統や文化を守る立場
ただ2つの右翼には、ひとつの共通点があります。
それは、天皇(日本の伝統)の存在です。
左翼は、反体制派として日米同盟には反対の立場をとりますが、左翼は天皇の権威を認めず、防衛力の放棄を主張しています。
軍事力の放棄によって平和を手にして、平等主義に基づいて天皇の権威を否定する事が戦後左翼の特徴といえるでしょう。
それでは戦中の左翼はどうでしょうか?
戦時下において敵国との和平や同盟を主張することは反体制です。
戦後は日米同盟(親米)を支持する右翼でも、戦時下での親米は左翼(反体制)となってしまうので、これがややこしくなってしまう1つの原因です。
左翼と共産主義

左翼を理解する上で欠かせない思想が、彼らが信奉する共産主義です。
【共産主義】
財産の一部または全部を共同所有することで平等な社会をめざす思想。
この思想は19世紀後半に、ソビエト連邦のマルクスとエンゲルスによって体系化された。
それまでの、自由主義経済では資本家と労働者の格差が広まってしまうため、資本家(ブルジョワジー)の持つ資本を、全ての人民に平等に分配し、格差をなくそうとする考え方。
参考記事:共産主義をさらに詳しくはこちら
左翼が掲げる共産主義思想は、旧ソビエト連邦を中心として世界中に浸透しました。
彼らは、『格差へのアンチテーゼ』『平等主義による理想社会』を目指して、共産主義革命に邁進しました。
共産主義 = 反資本主義 = 平等
左翼が日本の伝統であり歴史でもある皇室を認められないのは、この徹底した平等主義にあります。
一方で思想徹底するほどに、活動は先鋭化してしまいます。
戦後の学生運動では、共産主義革命を目指す若者の暴動によって、多くの血が流れる事となりました。
画像:神田カルチェ・ラタン闘争
日本での過激な左翼運動は、1972年の浅間山荘事件にて極左集団の暴力性が世間に知れ渡るまで続きました。
あさま山荘事件または浅間山荘事件(あさまさんそうじけん)は、1972年2月19日から2月28日にかけて、長野県北佐久郡軽井沢町にある河合楽器の保養所「浅間山荘」において連合赤軍が人質をとって立てこもった事件である。
![]()
Wikipediaより引用
とはいえ、今もなお、日本や世界各国では共産主義と反共産主義の争いは根強く残っています。
ここで一つ疑問が浮かびます。
なぜ左翼は武力の放棄(平和主義)を主張しながら、暴力による革命を目指すのか?
これは共産主義とはもともと、ソ連共産党によって世界の共産主義化に向けて作られた革命組織だからです。
小説の話のようですが、世界各国に存在する『共産党』は旧ソ連が世界で共産主義革命を起こす為のスパイ機関として設立されています。
これは日本も例外ではなく、日本共産党はソビエトの資金援助によって設立され、コミンテルンと言われる多くのソ連スパイが日本に侵入していました。
日本史ではゾルゲ事件が有名なスパイ事件です。
画像:ソ連のスパイとして日本国内で暗躍したゾルゲ
彼らの目的は、日本の共産化です。
主な目的は、2つありました。
✅日本の世論を日中戦争の長期化、日米開戦に持っていく事
✅日本を弱体化させて、最終的に共産主義革命を起こす事
事実、日米開戦を煽った当時のマスコミや政府中枢にもソ連のスパイが入り込んでいました。
朝日新聞に入り込んで日本の情報をソ連に流し、日米開戦への反米世論を煽った尾崎秀実もスパイ容疑で逮捕されています。
画像:朝日新聞記者でソ連のスパイだった尾崎秀実

画像:戦時世論を煽る朝日新聞
これらは、教科書では教わらない日本左翼の歴史であり、この流れは現代日本でも受け継がれています。
現在の大手マスメディアでも偏向報道がなされネットで取り上げられる事も多いですが、背景にはメディアを利用した世論操作という要因も存在する事は否定できません。
左翼にとって、皇室の存在、日本の武力、日米同盟は、共産主義革命の実現にとっては目の上のたんこぶです。
左翼が日本の軍事的弱体化を目指すのは、日本の共産主義化という目的があります。
現代でも左翼はデモ活動を通して、反体制を主張しています。
画像:打倒安倍政権Twitterより引用
左翼運動には、反戦と暴力が混在しています。
日本の左翼思想の源流をひもとけば、戦前から続く共産主義化の流れを含み、対米開戦を煽りながら日本の弱体化を目指したソ連の存在が垣間見えます。
少し視点を広げると、戦後の左翼は日米同盟の反対、軍事力の放棄を謳いながら、日本の軍事的弱体を一貫して進めていることがわかります。
右翼とは?
大陸派と親米派
右翼思想も、極端な思想になればなるほどに全体主義、共産主義に近づきます。
ここで、右翼と左翼を包括してわかりやすく考える為に、日本の極端な勢力は大きく2つに分類します。
『大陸派』と『親米派』
です。
大陸派
画像:韓日友好を主張する街宣右翼
大陸派とは、中国大陸、東アジア、ソ連(現ロシア)の国々と手を取り合って日本の生存を保持しようとする思想です。
これは、第二次世界大戦中に力を持ち、『大東亜共栄圏』を設立し、日本は東アジアの国々と共に軍事的および経済的な生存圏を作る事を主張した考え方です。
現代では
反米右翼
反米左翼
がこれに当たります。
戦時下において、1億玉砕を合言葉に日本を破滅に引きずりそうになった彼らの思想は、それはソ連の狙い通りだった事でしょう。
親米派
画像:アメリカを温かく迎える親米右翼
親米派とは、アメリカをはじめとする欧米列強との結びつきを強化して、日本の軍事的生存権を確保しようとする勢力です。
第二次世界大戦中、欧米列強は当然にして日本の敵国であり、親米派勢力は力を拡大する事は出来ませんでした。(親米右派は日米開戦に反対していました)
一方、戦後においては親米派はアメリカの支配下で日米同盟の強化と共に勢力を拡大しました。
戦前から親米派は少数派ながら、明確にソ連からの脅威を叫び、日米開戦に反対していました。
また、2020年現在の自由民主党も親米派の保守政党であり、親米派は大陸派に比べて穏健派が多いのが特徴です。
全体主義と自由主義
このように、右翼も左翼も、思想が極端になるほど、全体主義やファシズムに行き着きます。
第二次世界大戦中の日本においては、ソ連のスパイを含む大陸派の右翼が、軍部の極端な対外政策の原動力となりました。
極端な思想は、争いや暴力と一体化するのが世の常です。
暴力革命によって伝統や文化をひっくり返すのではなく、伝統や文化に固執しすぎて復古主義に陥るわけでもなく、少しづつ世の中を良い方向に変えていく。
私はそんな姿勢が大切だと思っています。
そこには、自由な経済活動や自由な主張が認められる社会でなければいけません。
極端な平和主義にも注意が必要です。
国民が健康で豊かに暮らしていける国にするには、防衛力は不可欠なのです。
極端な平和主義によって、日本が武力を完全に放棄したとしたら、瞬く間に他国からの侵略を許してしまうでしょう。
参考記事:日本の安全保障について
歴史に鑑みれば常に極端な主張には注意が必要です。
今、できる事を少しづついい方向に変えていく。
左右への思想を理解することで、双方の理想や戦略が見えてきます。
私は双方の思想を学びながらも、自由で文化的な未来を守りぬくためにできる事を考えています。
日本の未来を応援するブログの応援をお願いします^_^
最近のコメント