・実効為替レートって何?
・為替レートとの違いは?
・景気との関係についてわかりやすく知りたいです!
本記事ではこんな疑問を解消します。
本記事の結論
- 実効為替レートは通貨の購買力
- 近年は円安で雇用が改善する
実効為替レートとは?
結論からいえば、実効為替レートとは相対的な通貨の購買力を測るための指標のことです。
実効為替レート
相対的な通貨の購買力を測るための指標
ニュースで耳にする『1ドル105円』などの為替レートは名目為替レートといい、2国間の通貨の交換比率を表しています。
名目為替レート(2国間の交換比率)だけでは、日本円が外貨全体に対する相対的な価値を測ることはできません。
そこで、通貨が通貨全体に対しての強さを測る指標として活用されるのが実効為替レートなのです。
名目為替レート
2国間の通貨の交換比率
実効為替レート
通貨の購買力を測る指数
2つの実効為替レート
2つの実効為替レート
一般的に『実効為替レート』と言われる指標は名目為替レートを指します。
このら名目と実質の違いは『物価変動(インフレ率)を加味するかどうか?』という点です。
それではそれぞれ解説しますね。
①:名目実効為替レート
指数化した為替レートを貿易相手国との取引量で加重平均し「ある通貨の対外的な競争力」を表す指標として使用されます。
算出方法
日本円との間の2通貨間為替レートを各国それぞれに対する貿易量で計った相対的な重要度でウエイト付けして算出
②:実質実効為替レート
実質実効為替レートは、名目実効為替レートにインフレ率(物価上昇率)を加えて計算した値です。
通貨の対外競争力を測る場合には、為替レートだけでなく、物価の変動によっても影響を受けます。
例えば、日本の名目実効為替レートが不変でも、貿易相手国の物価上昇率が日本の物価上昇率を上回っている場合には、日本の相対的な競争力は好転します。
こうした点を考慮に入れた物価調整後の実効為替レートが「実質実効為替レート」です。
算出方法
①:円と他通貨間のそれぞれの名目為替レートと、相手国それぞれの物価指数に対する日本の物価指数との比率で調整
②:調整したそれぞれの実質為替レートを貿易ウエイトで加重平均して算出
実質実効為替レートと景気
実質実効為替レートは景気と強い関係があります。
とはいえ実質実効為替レートは、輸出入の増減など名目為替レートの影響も経済環境によって円安と円高が示す状況は変動します。
これは1970年を100とした日本の実質実効為替レートです。
バブル崩壊から本格的なデフレに突入した96年をピークに実質実効為替レートが円安に進んでいます。
ここからは物価の下落とともに実質実効為替レートは円安に進み、雇用が急速に悪化します。
ところが2000年代からは雇用と実質実効為替レートの関係に変化が生じています。
2009年のリーマンショックからはデフレが深刻化して実質実効為替レートは円高に向かうのです。
この時を境に実質実効為替レートは円高と失業率の悪化が相関するようになります。
画像:経済数量学者 高橋洋一氏作成
これは2000年以降からアベノミクス前後までの実質実効為替レートと失業率の推移をしめしたグラフです。
これをみるとリーマンショックの少し前からは、失業率の悪化と実質実効為替レート円高が連動するようになります。
そして、アベノミクス一本目の矢である大胆な金融政策によって、名目実質ともに円安に傾き失業率は大きく改善したのです。
つまりリーマンショック以降は、実質実効為替レートが円安となり対外的な価値が毀損されたとはいえ、国内での雇用は改善に向かって国内景気は良くなっていたのです。
通貨の実力である購買力が上がったとしても、雇用が奪われてしまうリーマンショック時のような経済環境では私たちには何もメリットがありません。
ですから、日本国民にとって昨今のトレンドでは、実質実効為替レートは円安の方がメリットが大きいのです。
まとめ
それでは、本記事の内容をまとめます。
①:名目為替レートとは普段耳にする相場で数値的な取引を記録したもの
②:(名目)実効為替レートとは多くの対象通貨に貿易量によるウェイトを使用して通貨を平均化して求めた為替レート
③:実質実効為替レートとは物価変動を考慮した実質為替相場と、多くの対象通貨との貿易量を考慮した為替レート
④:通貨の相対的な購買力を測る指標としては実質実効為替レートが適切
⑤:実質実効為替レートの円高が必ずしも経済にいいことではなく、近年のトレンドは円安と雇用改善が相関している。