目次
投資における信用取引とは?
株式や為替を取引する時に、信用取引と言われる方法があります。
信用取引とは、リターンを高める為の方法ですが、同時にリスクも高めます。
本記事では信用取引について、リスク対策までをなるべくわかりやすく、また詳しく解説します。
信用取引と現物取引
株価投資の取引には、信用取引と現物取引の2種類があります。
この2つの違いを単純化するとお金を借りて取引するかどうか?と言い換えられます。
少し詳しく信用取引と現物取引の違いを比べてみましょう。
✅信用取引
証券会社からお金を借りて株式を買ったり、株券を借りてそれを売ったり(空売り)する取引。
預けた担保の約3.3倍まで株式の取引が可能。
✅現物取引
時価で資産を売買する通常の取引のこと。
一般的に『現物取引』は『信用取引』と区別するために使用される。
このように信用取引とは、自己資金(あるいは証券)を担保にして証券会社からお金を借りて、自己資金の3.3倍までの金額で売買が可能な取引の事を言います。
信用取引を使って自己資金よりも多くの資金で売買する事を『レバレッジをかけて取引をする』と表現します。
※レバレッジとは、経済活動において、他人資本を使うことで自己資本に対する利益率を高めること、または、その高まる倍率。
このように信用取引は、自己資金の3.3倍までの売買ができますから、運用利益も3.3倍まで拡大する事が可能です。
一方で、運用損失も3.3倍まで拡大しますので信用取引はリスクが大きいとも言われています。
図のように証券会社から資金を借りて株を購入することを信用買いといい、証券会社から株を借りてそれを売って買い戻す事で利益をあげることを信用売り(空売り)と言います。
この時に、信用買いでは金利、信用売りでは貸株料や逆日歩と言われる調達費用がかかります。
空売りとは?
信用取引には、レバレッジをかけられる事ともう一つ大きな特徴があります。
それは、信用取引では空売りが出来るということです。
「空売り」とは、①証券会社から株を借りてそれを市場で売り②のちにそれを買い戻して証券会社に返却し③その差額の利益を狙う取引です。
この空売りは株価が下落する局面においても、利益を得ることができます。
空売りのメリットとデメリット
それでは空売りのメリットとデメリットについて解説します。
●空売りのメリット
✅相場の下落局面でも利益をあげる事ができる
✅リスクヘッジとして活用できる
前述した通り、空売りの一番のメリットは、相場の下落局面で利益をあげられることです。
また空売りは、バブル崩壊やリーマンショックなどの暴落局面で利益をあげられる性質から相場の過熱に対するリスクヘッジとしても活用が可能です。
●空売りのデメリット
✅相場の急上昇によって被る損失
✅貸株料(金利)を支払うこと
空売りのデメリットは、貸株料や逆日歩やどの調達コストが必要なことと株価の急騰によって損失が拡大してしまうことです。
通常の株取引での値下がりにも言える事ですが、相場の上昇は青天井と表現されるように行き過ぎる傾向がありますので注意が必要です。
制度信用取引と一般信用取引
信用取引は、『制度信用取引』と『一般信用取引』の2つの種類があります。
この2つの違いは、証券会社が『証券金融会社(証券会社とは別の機関)』と取引をするかどうかです。
制度信用取引は、証券会社が証券金融会社から株や資金を借り(貸借取引)て、それを投資家との取引に使用します。
一方で一般信用取引は、証券金融会社との取引が存在せず、投資家と証券会社の間でおこなわれる信用取引を指します。
具体的に制度信用と一般信用は、下記の点が違います。
貸株料は一般信用取引のほうが高い傾向にありますが、一般信用は返済期限が長く対象銘柄も多く、制度信用取引よりも自由度が高いと言えます。
貸株料と逆日歩(ぎゃくひぶ)とは?
ここで貸株料と逆日歩について解説します。
✅貸株料
投資家が空売りをする為に借りる株に対して支払うコストです。
買い建ての信用取引の場合は金利を支払います。
✅逆日歩
逆日歩とは信用売りが過熱した結果、証券会社の保有している株式が不足した場合に、投資家が支払う『株式調達費用』です。
一般信用取引には逆日歩はありません。
このように信用取引には、貸株料、逆日歩、金利といったレバレッジを効かせるための調達コストがかかります。
頻繁に、長期的におこなう場合には、コストが大きくなることがありますので信用取引を行う場合はあらかじめ把握しておく必要があります。
ベア型投資信託
ここで、信用取引による空売りを使わなくても下落相場で利益を上げる方法について紹介します。
それは、ベア型の投資信託を購入するという方法です。
ベアとは熊の事ですが、株式市場では弱気(下落)相場の事を指します。反対に、強気(上昇)相場の事をブルと言います。
ベア型の投資信託は、相場が下落する時に利益をあげられるように運用されている商品の事を言い、相場が下がると価格があがるように設計されています。
株式市場の資産価格は、上昇と下落を繰り返しながら大きな方法にすすみます。つまり、下落でも利益をあげられる空売りやベア型の投資信託は、リスクヘッジにもなり、効率的に資金を運用できるのです。
また、レバレッジ型の投資信託は日経平均株価などの指標の前日比変動率(%)の2倍(ベア方の場合は−2倍)になるように設計されており、相場の下落が見込まれる時には活用できる投資信託です。
ただ、ベア型の投資信託は上昇相場では損失を被ってしまいますので注意が必要です。
信用取引は危険?
レバレッジを考えると、信用取引は危険だと考える方は多いでしょう。
たしかに投資の初心者の人に、自己資金を拡大させて取引をおこなうことはリスクが大きいのは間違いありません。
一方で、信用取引は効率的に資金を増やすことができるメリットもあります。
すべてはリスク管理ができるかどうか?
これだけです。
リスク管理ができるかどうかで、信用取引を活用できるかどうかが決まります。ここからは、信用取引のリスクを軽減する方法を解説します。
✔️信用取引のリスク管理法
①損切りポイントを決めて取引をする
②買い建てと売り建ての投資でリスク分散をする
①:損切りラインを決めて取引をする
信用取引で自己資金以上の資金を運用する場合には、必ず『損切りライン』を決めておき、その自己ルールを必ず実行することが必要です。
特に空売りをする場合には、株が上昇しつづける『青天井』を警戒しなければいけません。
株価は下落をするにしても、0円以下にはなりません。しかし、上昇においては理論上は100万円でも1000万円でも無制限に上がり続けます。
特に買い注文が殺到して、いわゆる『※寄らずのストップ高』を連発してしまえば、空売りをしている投資家にとっては致命的となります。
これを避けるためには、信用取引における空売りをおこなう場合は、①ストップ高を絶対に避けて②ストップ高になる前に損失を確定して株を買い戻すポイントをあらかじめ決めておくことが必要です。
これさえ実行できれば、信用取引のリスクを大幅に抑えつつ、効率的に資金を運用することができます。
具体的には、逆指し値注文を使って損切りする事がおすすめです。
プロスペクト理論から説明される通りで、わたしたち人間にとって自分の損失に対する苦痛は甚大なものです。
損失を確定する損切りを機械的に行うには、逆指値注文を使っておこなうと間違いありません。
信用取引において『損切り』は1番のリスク管理だという事を肝にめいじておきましょう。
②買い建てと売り建ての投資でリスク分散をする
次は、買い建てや売り建のどちらか片方に集中して投資する事を避けるために、買いと売りの双方を行うことで分散投資的なリスク管理をする方法です。
例えばあなたが『この株はこれから必ず上がる』と思う銘柄があらとします。この銘柄を購入するために、あなたは自己資金に3倍のレバレッジをかけて取引きしたとします。
そうとはいえ、相場に絶対はありません。
もしこの後、経済危機や大地震などの有事が起これば、いくら未来が有望な株であってもマイナスの影響を受けてしまうことは避けられません。
そしてあなたが3倍のレバレッジをかけて買い入れた株が暴落したとします。
そうなってしまえば、この時にあなたが抱える損失は、自己資金を上回ってしまう可能性が大いにあるのです。
ですからどれだけ銘柄選定に自信があったとしても、レバレッジをかけて一つの銘柄に集中投資をしてしまうことはハイリスクです。
もしもレバレッジをかけて買いを入れるのであれば、残りの部分的な資産をベア型の投資信託を購入したり、他の銘柄の空売りをしたりして万が一相場が下落局面に入ったときのリスク分散をしておくと良いでしょう。
繰り返しますが、どれだけ自信がある銘柄であっても相場に絶対はありません。レバレッジをかけて集中投資をすることは避けて、反対売買でのリスクヘッジをしておくことをおすすめします。
まとめ
それでは信用取引についてまとめます。
✅信用取引とは、証券会社からお金を借りて株式を買ったり、株券を借りてそれを売ったり(空売り)する取引のことで、預けた担保の約3.3倍まで株式の取引が可能。
✅信用取引では、信用買いと信用売り(空売り)ができる。
「空売り」とは、①証券会社から株を借りてそれを市場で売り②のちにそれを買い戻して証券会社に返却し③その差額の利益を狙う取引のこと。
信用取引では、制度信用取引と一般信用取引がある。
空売りは下落相場でも利益を出せるメリットがあるが、ベア型の投資信託でも同じ方向の運用益を出すことができる。
信用取引のリスク管理方法は、
①損切りポイントを決めて取引をする
②買い建てと売り建ての投資でリスク分散をする
信用取引は、自己資金を拡大させて利益を拡大したり、相場の下落局面でも利益を上げることができたりと、資産運用の効率化を大きく前進させてくれます。
ただ一方で、やり方によってはリスクも拡大してしまいますから、リスク管理の徹底が必要です。
また、相場の流れに応じてベア型の投資信託などを活用していく事もおすすめです。