
・歴史や加盟国は?
・NATOについてわかりやすく知りたいです!
本記事の結論
- NATOは西側諸国の軍事同盟
- 加盟国は30カ国
- メリットは安全保障の強力な向上

NATO(ナトー)とは?
NATO(North Atlantic Treaty Organization)とは1949年に西側諸国を中心に結成された共同防衛同盟のことで、日本語では北大西洋条約機構とよばれます。
西側諸国
東西冷戦時代にアメリカ合衆国と同盟を結び、ソビエト連邦を中心とする東側諸国と対立した国の連合体のことで『資本主義陣営』や『自由主義陣営』とよばれることもある。
NATOは自由・民主主義・個人の自由・法の支配に基づき作られてきた諸国民の共有の遺産及び文明を守るという理念の元に結束しました。
つまりNATOは、北大西洋地域における平和と安定を守るための共同防衛構想ということです。

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NATOの目的
NATOの目的(条約前文)
- 国連憲章の目的及び諸原則への信頼と平和裏に生きることへの希望を再確認
- 自由,共通の生得権,及び人民の文明を擁護
- 北大西洋地域の安定と福祉の促進を追求
- 集団的防衛並びに平和及び安定の維持のための努力の統合を決意
西側諸国の共同防衛同盟であるNATOは、ソビエト連邦を中心とした東側諸国(共産主義陣営)に対抗するために結成されました。
1991年にソビエト連邦が崩壊して東西冷戦は終わったかのように見えましたが、2022年に勃発したロシアによるウクライナへの軍事侵攻によってNATOの重要性が見直されることとなりました。

NATO加盟国
1949年結成当初のNATOは下記の12カ国が参加しました。
結成時の参加国
アメリカ・アイスランド・イタリア・イギリス・オランダ・カナダ・デンマーク・ノルウェー・フランス・ベルギー・ポルトガル・ルクセンブルク
冷戦が激化するにつれて加盟国は増えつづけて2022年には30カ国にまで拡大しました。
NATO加盟国
- アイスランド
- アメリカ
- イギリス
- イタリア
- オランダ
- カナダ
- デンマーク
- ノルウェー
- フランス
- ベルギー
- ポルトガル
- ルクセンブルク
- ギリシャ
- トルコ
- ドイツ(当時西ドイツ)
- スペイン
- チェコ
- ハンガリー
- ポーランド
- エストニア
- スロバキア
- スロベニア
- ブルガリア
- ラトビア
- リトアニア
- ルーマニア
- アルバニア
- クロアチア
- モンテネグロ
- 北マケドニア

NATOのルール

NATOの共同防衛同盟に関するルールは大きく2つに分かれます。
NATOのルール
- 加盟国が武力攻撃を受けた場合は全加盟国で反撃
- NATOに加入するには加盟国の全会一致が必要
それぞれ解説しますね。
①:加盟国が武力攻撃を受けた場合は全加盟国で反撃
北大西洋条約第5条
欧州又は北米における一又は二以上の締約国に対する武力攻撃を全締約国に 対する攻撃とみなす。締約国は,武力攻撃が行われたときは,国連憲章の認め る個別的又は集団的自衛権を行使して,北大西洋地域の安全を回復し及び維 持するために必要と認める行動(兵力の使用を含む。)を個別的に及び共同して 直ちにとることにより,攻撃を受けた締約国を援助する。
北大西洋条約の締結国は北大西洋条約の第5条に記された共同防衛の義務を負います。
簡単にいえば第5条はNATOの国への攻撃は全NATOの締結国への攻撃とみなすということで北大西洋条約の中で最も重要な条文です。
このような集団的自衛権を持つことで、軍事力の小さな国でも高水準な安全保障体制を構築することができるのです。

②:NATOに加入するには加盟国の全会一致が必要
NATOに新しく加盟をするにはNATO締結国のすべての国からの了承を得る必要があります。
当然ですが一国への武力攻撃に対してすべての締結国が攻撃された国を助けるには、信頼のおける仲間でなければ行動ができません。
近年ではフィンランドとスウェーデンのNATOの加盟にトルコが反対して実現が出来なかった事例もあります。(その後フィンランドとスウェーデンは2022年10月にNATOへの加盟を発表しました。)
▶︎参考記事
ロシアに軍事侵攻されたウクライナは『NATOが求める民主主義の基準に満たない』という締結国の意見が加盟を阻害していました。

NATO軍事介入の例
それでは実際にNATOが介入した紛争などを解説します。
NATOの歴史
- ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争
- コソボ紛争
- マケドニア紛争
- アフガニスタン紛争
- リビア内戦
それぞれ簡単に解説しますね。
①:ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争(1992〜1995)
ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争は、ユーゴスラビアから独立したボスニア・ヘルツェゴビナで1992年から1995年まで続いた内戦です。
この紛争ではNATO軍はセルビア陸軍に対する空爆を中心に軍事介入を実施しました。
NATO軍は15カ国から400機の軍用機と5,000人の兵士が動員されたのです。
②:コソボ紛争(1998〜1999)
コソボ紛争はヨーロッパ南東部、バルカン半島に位置するコソボで発生したユーゴスラビア軍とコソボ解放軍による対立のことです。
NATOはコソボ解放軍とともにユーゴスラビア軍やセルビア人への空爆を開始しています。
この一連の空爆計画は『アライドフォース作戦』と呼ばれて大規模な空爆は『コソボ空爆』と言われています。
③:マケドニア紛争(2001)
マケドニアにも大量に流れ込んだコソボ難民の1部の武装勢力がマケドニア軍と対立を始めました。
マケドニア紛争ではNATOが『欠かせない収穫作戦』としてコソボ武装勢力の武装の解除に動きました。
2001年8月にはアルバニア系住民(コソボ難民)の権利拡大を認める和平合意文書(オフリド合意)に調印して停戦、NATO軍が駐留を開始することになりました。
④:アフガニスタン紛争(2001〜2021)
アフガニスタン紛争は2001年9月11日にアメリカで発生した同時多発テロへの報復として始まったアメリカ(多国籍軍)とアフガニスタン(タリバン・アルカイダ)との間の戦争のことです。
同盟国アメリカへの武力攻撃発生を受けてNATOは、10月2日に集団的自衛権を発動して戦争への参加を決定します。
多大な戦略を投下した多国籍軍でしたが、明確な戦果をあげることができませんでした。
⑤:リビア内戦(2011)
リビア内戦は2011年に発生した大規模な反政府武力闘争のことです。
NATOは反体制側として参戦して空爆を開始したしました。
NATOの軍事的支援によって攻勢を強めたリビアの反体制勢力によって、最高権力者として40年以上政権の座にあったカダフィ大佐が率いる大リビア・アラブ社会主義人民国は崩壊したのでした。
NATOと日本

日本は日本国憲法によって武力の行使を大幅に制限されているためNATOへの加盟はできません。
しかし日本はNATOの『グローバルパートナー国』として、安全保障上の協力関係を築いています。
下記は日本とNATOのグローバルパートナー国としての協力計画からそのパートナーシップの原則を抜粋したものです。
日本及び北大西洋条約機構(NATO)は,自由,民主主義,人権及び法の支配という共通の価値並びに戦略的利益を共有する,信頼できる必然のパートナーである。
我々は、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持し、及び強化するために緊密に協力する。
我々は各々これらの共有された価値及び戦略的利益並びに国民の自由及び安全を擁護する決意を有している。
我々はまた,多数国間協力を通じた紛争の抑止及び危機の予防を重視する。
『自由』や『民主主義』といった西側諸国の価値観を共有する日本とNATOは安倍晋三元首相の価値観外交のもとで強化されました。
具体的には日本とNATOは下記の分野で協力関係を結んでいます。
協力分野
- サイバー防衛
- 海洋安全保障
- 人道支援・災害救援
- 軍縮・軍備管理
- 大量破壊兵器の不拡散
- 防衛科学技術
- 女性,平和及び安全保障
- パブリック・ディプロマシー活動
- 日本及びNATOの共通関心分野における防衛及び安全保障
近年アジアでは中国による台湾侵攻が危惧されていて、自由と民主主義という価値観を共有する日台とNATOとの連携はさらに重要性をましています。
2022年にロシアの侵略を許してしまったウクライナとNATO加盟国の安全保障のレベルの違いはロシアウクライナ戦争によって明らかとなりました。
日本もまた安全保障のレベルを高めるために、自由で開かれたインド太平洋諸国との連携や日米同盟を強化して共同防衛の概念を構築することが喫緊の課題なのです。

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まとめ
本記事のまとめ
- NATOはヨーロッパ諸国の共同防衛構想
- 自由や民主主義、法の支配などの価値観を共有する国々で構成される
- NATO加盟国への攻撃は全NATOへの攻撃とみなして反撃する
- 新しく加盟する場合には加盟国全ての賛成が必要
- 日本はNATOのグローバルパートナー国
