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自由貿易のメリットとデメリットについてわかりやすく解説

本記事ではこんな疑問についてお答えします。
そもそも自由貿易とは?

自由貿易をシンプルにいえば、関税など国家の介を排して自由に行う貿易のことです。
自由貿易はイギリスのアダム・スミスやデヴィッド・リカードらによって提唱されました。
貿易がお互いの利益になるというのは経済学の原則です。
とはいえ、国家間の貿易に関する関税をすべて撤廃することは当然むずかしく、またTPP(環太平洋パートナーシップ貿易協定)のような取り決めにも参加国間では賛否が巻き起こります。
自由な貿易はお互いの利益になるはずなのに、どうして問題になってしまうのでしょうか?
ここからは自由貿易のメリットとデメリットに関して解説します。
自由貿易のメリット

●関税の撤廃によってお互いの国の厚生が最大化する
なんといっても自由貿易のメリットは、関税の撤廃によって自由な貿易が可能になることで、お互いの利益が拡大することです。
お互いの利益が自由貿易によって最大化される理由は、デイビッド・リカードの『比較優位の法則』によって実証されています。※比較優位の法則に関する解説は後述します。
自由貿易のデメリット

●自国の産業が競争に負けてしまう恐れがある
国家間の自由な取引が活発になれば、自国の産業は世界の市場とたたかわなければいけません。
もし自国の産業が負けてしまえば、国内産業は衰退しては国内の雇用が奪われてしまうことになります。
●安全保障上の弊害が発生する恐れがある
完全に貿易が自由になれば、軍事や情報に関わる先端技術が相手国に流出してしまう恐れがあります。
近年、この懸念が顕在化しておこった貿易摩擦が米中貿易戦争です。
比較優位説とは?
比較優位説は、リカードが提唱した外国貿易と国家間の分業に関する理論のことです。
これは、一国の商品生産費の比をほかの国と比較して、優位(生産力が勝る)の商品を輸出して、劣位(生産力が劣る)の商品を輸入すれば双方が利益を得て国際分業が行われるという学説です。
比較優位説をとてもシンプルに説明するとこうなります。
A国ではりんごを3つ、バナナを1本をつくるためにそれぞれ1人の労働力が必要です。
B国ではりんごを3つ、バナナを4本をつくるためにそれぞれ1人の労働力が必要です。

A国
2人でりんごを3つとバナナ1本が生産できる
B国
2人でりんごを3つとバナナ4本が生産できる
ここから、A国とってはりんご、B国にとってはバナナの生産が得意だということがわかります。
経済学ではこの得意な生産物を、『比較優位にある』といいます。

そして、お互いの国は得意な生産物をつくることに特化すると、全体の生産量が増えます。

以前は、両国あわせてりんご6個、バナナ5本の生産量でしたが、お互いの得意分野に特化して生産することで、りんご6個、バナナ8本まで生産量が拡大しました。

もちろん特化した生産は、貿易によって取引することが前提ですから、これらを取引してお互いの利益を拡大するのです。
これがリカードが提唱した比較優位の法則です。

自由貿易協定とは?
貿易にはこれだけのメリットがあることが確認できました。
そしてこの貿易のメリットを最大限に拡大しようとするのが自由貿易協定なのです。
自由貿易の協定には大きく分けて①FTAと②EPAの2種類があります。
①:FTAとは?
FTAとは『Free Trade Agreement』の略で自由貿易協定のことです。
FTAは、特定の国や地域のあいだで関税やサービス貿易の障壁を削減・撤廃することを目的とする協定です。
FTAは締結国や地域との自由な貿易を実現し、貿易や投資の拡大を目指します。
②:EPAとは?
EPA とは『Economic Partnership Agreement』の略で経済連携協定のことです。
EPAはFTAを基調としながらも、関税の撤廃のみならず、国家間や地域内での貿易や投資を促進するために下記のような取り決めをおこないます。
①「輸出入にかかる関税」を撤廃・削減する。
②「サービス業を行う際の規制」を緩和・撤廃する。
③「投資環境の整備」を行う。
④ビジネス環境の整備を協議する
EPAはFTAよりとさらに踏み込んだ自由貿易協定といえます。
TPPとは?

近年、日本が結んだ自由貿易協定で1番議論が巻き起こった供給はTPP(環太平洋パートナーシップ協定)でしょう。
TPP協定は、アジア太平洋地域において、モノの関税だけでなく、サービスや投資の自由化、さらに知的財産、金融サービス、電子商取引、国有企業の規律など、幅広い分野でルールを構築する経済連携協定です。
つまり、TPPはかなりの幅広い分野におよぶ自由貿易協定だったために、根強い反対意見を浴びたのです。
まとめ

結局のところ、自由貿易のデメリットとしてあげられる
●自国の産業が競争に負けてしまう恐れがある
●安全保障上の弊害が発生する恐れがある
これらを、自由貿易によって得られるメリットが超えられるかどうかは、自由貿易協定を考えるうえで重要です。
例えば、TPPについて考えてみましょう。
TPPは日本主導のもとで第2次安倍政権が、枠組みをつくることを表明したところから猛批判を浴びていました。
ただ、結論からいえばTPPに参加したことは正解だったと私は考えています。
なぜならTPPは独裁国家中国に対する牽制の効果などアジアにおいて安全保障面でのメリットがとても大きいからです。
また、日本がTPPの参加を表明した2013年当時には以下のような批判が日本に蔓延していました。
「日本の農業が壊滅する」
「食の安全が脅かされる」
「国民皆保険制度が崩壊する」
なぜこう言われていたかといえば、当初はTPPにアメリカが参加を表明していたために、アメリカの都合のいいようにルールを作られてしまうという理由から非難を浴びたのです。
しかし、結果はまったく違ったものになりました。
2017年、保護主義を掲げるトランプ大統領は、アメリカのTPP交渉離脱を表明したのです。
日本のTPP参加が決定した頃は、リベラルから保守派まで知識人といわれる人たちはこぞって大反対をしていました。
しかし2021年現在、TPPはイギリスも参加を検討するにいたり、あの中国ですら参加の意向を示しています。(中国は私有財産を否定しているためTPPへの参加は原則できません)
また、日本の農業がTPPによって壊滅するかどうかは、日本の金融財政政策によって大きく変わってきます。
日本が為替レートを適正にたもつ金融政策ができれば、日本の農業を保護する財政政策を打つことができれば、日本の農業はまったく心配はありません。
むしろ、『メイド・イン・ジャパン』のクオリティに世界は驚くことになるでしょう。

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