目次
インフレターゲットとは?
インフレターゲットとは、政府と中央銀行が定めるインフレ率(物価上昇率)の目標値のことです。
また、インフレターゲット目標値にインフレ率がおさまるように金融政策をおこなうことをインフレターゲット政策と言います。
過度なインフレを抑える一方で、経済がデフレに陥らないように一定のインフレ率を確保する効果があります。
インフレターゲットの目的
インフレターゲットの最大の目的は、雇用の最大化です。
さらに詳しくいえば過度なインフレを防ぎ金融政策の効果を最大化するいうことです。
なぜならインフレターゲット(物価目標)によって、中央銀行が目標達成への姿勢を市場にしめすことで、予想インフレ率を高めることができるからです。
▶︎▶︎予想インフレ率をわかりやすく解説
つまり、インフレターゲットの設定によって世の中(企業や資産市場)の将来への見通しがインフレ転換することで、雇用を最大化させることがインフレターゲットの最大の目的といえるのです。
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NAIRUとは?
近年、日本でインフレターゲットが採用された目標値は2%で、2013年から実施された経済政策『アベノミクス』の時です。
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インフレターゲットが2%に設定された理由は、国内の雇用情勢を効果的に改善させられるインフレ率の下限が2%だからです。
日本では完全失業率の下限が2%~2.5%といわれています。
これは、日本では2%~2.5%の失業率が達成できれば完全雇用(非自発的な失業者がいない状態)と予想されているということです。
この完全雇用が実現できるインフレ率の下限が2%なのです。
つまり、インフレ率は2%を超えても雇用はそれ以上には改善せず、インフレ率だけが上昇してしまうということです。
このインフレ率を加速させない失業率の下限閾値を『NAIRU(ナイル)』といいます。
これは縦に失業率、横にインフレ率をとったグラフでインフレ目標と金融政策の関係をあらわしたものです。
日本ではインフレ率が2%を超えてもそれ以上は失業率が改善しないと推計されています。
したがって、アベノミクスで2%のインフレターゲットが採用された理由は、完全雇用を達成しながら余計なインフレをさける数値が2%だったということです。
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インフレターゲットの効果
それではアベノミクスでインフレターゲットが採用されてから長い時間が経っていますが、この政策の効果はあったのでしょうか?
結論からいえば、『一定の』効果はあったといえます。
その理由を、①:効果があった点と、②:効果が不十分な点の2つの視点に分けて解説します。
①:効果があった点
インフレターゲットの効果があったといえるポイントは日本の失業率の改善にあります。
このグラフを見ると、アベノミクスが開始された2013年から失業率は減りつづけて、コロナ流行前の2020年に日本の失業率は2%前半まで低下しました。
一時的ではありますが完全雇用を達成して、インフレターゲットは金融緩和政策の補完をする形で効果を発揮したといえます。
しかし2020年の新型コロナウイルス感染拡大によって、失業率は大きく悪化してしまうこととなります。
②:効果が不十分な点
2%のインフレターゲットが不十分だった理由を結論からいえば、政府と中央銀行の目標達成へのコミットメントが希薄化して雇用情勢の改善も一時的になってしまったことです。
前述したとおり、インフレターゲットの効果は政府と中央銀行の目標達成への姿勢が市場に信頼されてはじめて効果を発揮します。
しかし、2%のインフレターゲットへの信頼は、開始当初はよかったものの、その後の日本のインフレ率の低迷に対して効果的ば施策を打てずにいた政府日銀の姿勢によって次第にゆらいでいったのです。
これは長期的な日本のインフレ率の推移です。
長期的には、日本のインフレ率に対してインフレターゲットの効果が最大限に発揮できたとはいえない状況にあることは間違いありません。
新型コロナウイルスの感染拡大によって成果がでていた失業率も再び悪化してしまいました。
アフターコロナでは、政府と日銀はインフレターゲットに再コミットメントする必要があります。
まとめ
①:インフレターゲットとは、目標とするインフレ率を設置してその範囲にインフレ率が収まるように金融政策をおこなうこと
②:インフレターゲットの目的は、過度なインフレを防ぎながら雇用を最大化すること
③:日本のインフレターゲット(アベノミクス)で2%に設定された理由は雇用を最大化させるため
④:日本のインフレターゲットは、雇用に対しては大きな成果があった一方で、市場へのコミットメントが弱まったことは反省点である