リフレーション政策とは?【わかりやすく解説】

リフレーション政策とは?

 

本記事の内容

リフレーション政策は低インフレ政策

リフレーションは金融政策でつくる

リフレーションは雇用を最大化する

 

シンプルにいえば、リフレーションとは

低インフレによって景気が活性化している状態

 

であり

 

リフレーション政策とは

金融政策によって低インフレを起こす政策

といえます。

 

近年、リフレーション政策が日本で実施されたのは2012年末から始まった第2次安倍内閣による経済政策アベノミクスです。

 

【補足記事】▶︎【アベノミクスとは?】成果と課題をわかりやすく解説

 

本記事ではリフレーション政策のしくみや効果について、わかりやすく解説します。

 

 

リフレーションと金融政策

 

結論からいえば、リフレーション(低インフレ)は、中央銀行による金融政策よって起こします。

 

金融政策は、国内のお金の量を調整することで物価をコントロールする政策です。

 

お金の量が物価に影響するメカニズムを簡単に解説します。

 

物価は世の中のお金と物の量のバランスで決まる

 

世の中にりんご1個と1万円だけが存在するとします。

 

つまり、りんご1個は1万円です。

 

 

ところが1年後に、りんごが10個に増産されたとします。

 

 

 

 

すると、りんご一個の価格はいくらになるでしょう?

 

 

そうです。

 

お金の量は1万円のままですから、りんご1個あたりの価格は千円になります。

 

この物価の下落は、『デフレーション』と言われる現象で、バブル崩壊以降の日本が苦しんだ不況の原因です。

 

【補足記事】

デフレーションとは?】わかりやすく解説

 

デフレーション

 

 

 

インフレーション

 

 

 

つまり、世の中のお金の量を調整する金融政策は、物価に影響を与えて最終的には景気を調整します。

 

【関連記事】

▶︎【金融政策とは?】わかりやすく解説

 

このようにリフレーションとは、金融政策によって発生する低インフレの状態をいいます。

 

リフレーションと好循環

 

経済をリフレーションにもっていく最終目的は国内の景気を好循環させることです。

 

それでは、なぜリフレーション(低インフレ)は景気を好循環させるのでしょうか?

 

それは

マイルドなインフレ経済では雇用が最大化するから

です。

 

ここで、前述の物価の例を思い出してみましょう。

 

『低』インフレとは、お金の量に対して物の量が『少し』不足している状態です。

 

つまり低インフレでは、『少し』供給量が不足している状態で労働市場が『やや』人手不足になります。

 

人手不足市場では、企業による求人が活性化しますから、低インフレのリフレーションでは失業率は低下して賃金が上昇します。

 

このように、低インフレでは雇用が拡大し、デフレでは雇用が縮小する関係で、物価と雇用は相関関係にあります。

 

ハイパーインフレ

 

とはいえ、インフレはどこまで拡大しても良いかといえば、そうではありません。

 

一定のインフレ率に達すると雇用の改善は止まり、インフレ率だけ拡大します。

 

この一定のインフレ率を『NAIRU』と呼び、日本ではおおよそ2%〜2.5%と言われています。

 

 

この『一定のインフレ率』を超えて、ハイパーインフレーションを起こさないために実施する政策をインフレターゲット(物価目標)といいます。

 

インフレターゲット(物価目標)

 

インフレターゲット(物価目標)の目的は2つあります。

 

①:過度なインフレを防ぐこと

②:雇用を最大化させること

 

日本で初めて明確にインフレターゲットが設定されたのは、2013年のアベノミクスでも、2%のインフレ率が設定されました。

 

実はこのインフレ目標が設定された理由も、完全雇用を達成するための数値設定だったのです。2021年5月現在、残念ながらこの目標は達成できていません。

 

過度なインフレを防ぐ事

 

リフレーション政策では、世の中のインフレ率が目標に達するまで金融緩和を行います。

 

また、その目標が達成できれば次は金融政策を転換し、金融引き締めに向かいます。

 

これによって、ハイパーインフレーションを防ぐ効果があります。

 

参考記事:世界のハイパーインフレ・原因と対策

 

アベノミクスが開始された当時は、メディアを中心にこんな批判がなされました。

 

『ハイパーインフレになる』

 

この手の批判をする人は、おそらくインフレターゲットの意味や目的を全く理解できていないのでしょう。

 

雇用を最大化させる

 

インフレターゲットを設置するもう一つの目的は

中央銀行がインフレ目標の達成への姿勢を示すこと

です。

 

中央銀行がインフレ目標の達成への姿勢を示すことで、市場にインフレ期待を形成し、雇用を最大化させることが出来るのです。

 

期待とは

人間は常に、将来に何が起きるだろうかということを考えて生きています。(中略)

それが経済に大きな影響を与えるのです。

人間行動が経済を規定その人間行動は「期待」によって左右されるという考え方です。

引用元

 

インフレ期待とは、世の中の人々が『これから好景気がくる』という将来への見通しをつくることです。

 

インフレ期待が形成されれば企業の見通しも楽観的になり、人材投資が活発化して雇用を拡大します。

 

つまりインフレ目標の設定は、日本銀行と政府の目標を明確化して、市場に将来の見通しをアナウンスする役割があるのです。

 

残念ながら2021年5月現在、黒田総裁率いる日本銀行は、2%の目標を達成出来ていません。

 

 

 

 

 

リフレ政策の失敗例

 

平成バブルの崩壊以降、日本のデフレ経済の原因はリフレーション政策が行われてなかったことにあります。

 

例えば、リーマンショックが起こった2008年前後の白川日銀総裁による金融政策は、大失敗と言わざるを得ません。

 

 

これはリーマンショック時の日銀・アメリカ(FRB)・ユーロ(ECB)よる通貨供給量の変化率(貨幣量を拡大した比率)です。

 

参考記事:リーマン・ショックの原因

 

リーマンショックという金融危機では、市場から需要が消失してデフレ圧力が強まります。

 

当然、デフレに陥らないように金融緩和をする必要があります。

 

しかし、アメリカ、ユーロの中央銀行が金融緩和を行い貨幣量を急速に拡大する中で日本銀行は何もしませんでした。

 

この当時の日銀の失政によって、外貨に対する円の価値が高まり、デフレ不況に拍車をかける過度な円高に突入したのです。

参考記事:為替レートとは?わかりやすく解説

 

結果として日本は、リーマンショックの震源国であるアメリカよりも甚大な被害を被ったのです。

 

リフレ政策が実施されなかった理由

 

それでは、なぜ失われた20年といわれる日本のデフレ経済下において、リフレ政策は見向きもされなかったのでしょうか?

 

それは、日本銀行の権力の強さに要因があります。

 

強すぎる日本銀行の独立性

 

✔️目標の独立性

✔️手段の独立性

 

世界大戦後のハイパーインフレなどの失敗の反省から、中央銀行には、独立性が必要とされています。

 

それは上記のうちの、手段の独立性です。

 

政府 = 目標決定

中央銀行 = 手段の決定と目標の達成

 

これが健全な、政府と中央銀行の関係です。

 

中央銀行はあくまで手段の独立性を持ってはいても、目標の独立性は持っていないのです。

 

しかし1997年、本格的に日本がデフレに突入したこの時期に、日本銀行法(日銀法)が改正されました。

 

この改正法によって、日銀は独立性を強める事となるのです。

 

この時に改正されたポイントは、総理大臣が日銀総裁の罷免権を失った事です。

 

これによって事実上、日銀総裁は目標の独立性も手にする事になりました。

 

なぜならどれだけ目標を達成できなくても、日銀総裁はクビにならないからです。

 

97年以降に、日本銀行が金融引き締めを継続させ、デフレ不況が続いた要因は、この日銀の権力が大きくなりすぎたことも関係しています。

 

リフレ政策の効果

 

次は、経済をリフレーション(マイルドなインフレの状態)に持っていく事で得られる効果は多岐にわたります。

 

資産価格の上昇

雇用の創出

✅所得の底上げ

✅消費の活発化

自殺者数の低下

 

まだまだ挙げればたくさんありますが、主要なものはこのくらいでしょうか。

 

前述の通り、金融緩和はインフレ期待を引きあげます。

 

株価が上昇し、これから景気が良くなると考えた、企業は設備や人材投資を活性化させます。

 

他方で資産価格の上昇は、金融機関や株式会社、投資家の利潤を拡大させ、融資や投資、個人消費を活発化させます。

 

結果として企業収益は拡大ます。

 

企業収益が拡大すると、賃金も上昇します。

 

失業率が減少する事で、自殺者数も減少します。

 

これらはすべて、実際にアベノミクスでも見られた現象でした。

 

出典:高橋洋一氏Twitter

 

アベノミクスによるリフレ政策が雇用に与えた好影響は、このグラフで一目瞭然です。

その後2020年のコロナショックに至るまで、雇用情勢は改善し続けたのです。

 

リフレーション政策は、第1に雇用に働きかけます。

これが経済を活性化させる為にはとても重要なのです。

雇用が改善すれば、やがて完全雇用という状態に行き着きます。

✅完全雇用

ある経済全体で非自発的失業(自己都合で仕事をしていない人を除く失業者)が存在しない状態。

 

日本での完全雇用失業率は、いくつかの推計があります。

大体2%〜2.5%程度の失業率まで改善できれば、非自発的失業者(自分が進んで仕事をしない人以外の失業)がいない状態になると言われています。

 

完全雇用の状態では、働く意思のあるすべての人達が給料をえられる為、雇用の拡大は消費の底上げに繋がります。

企業収益は上がり、物価も上がるのです。

 

つまりリフレ政策は、金融緩和によって雇用の改善を図り、経済の好循環を作ることと言えます。

 

リフレ政策の波及経路

 

 

 

出典 岩田規久男元日銀副総裁公演資料を基に筆者作成

 

中央銀行がインフレ目標にコミットメント

マネタリーベースの拡大(通貨供給量の拡大)

参考記事:マネタリーベースとは?

⬇︎

予想インフレ率(インフレ期待)の上昇

✅予想実質金利の低下

 

ここから実体経済に先駆けて、資産市場と外国為替市場が反応します。

予想インフレ率が上昇すれば、為替は円安に向かいます。

参考記事:為替レートとは?わかりやすく解説

 

為替の円安

輸出企業の業績が拡大

株価上昇

 

この流れで資産価格が上昇すれば、企業の投資、人財投資、消費が活発化します。

 

消費が活発化すれば、物価は上昇します。

インフレが形成されると

需要がお金から物へシフト

するのです。

つまり、リフレーション政策によって生まれたマイルドなインフレは、経済を好循環に導きながら、さまざまな問題を解決するのです。

 

リフレ政策への批判

 

日本でリフレ政策は永らく批判の対象となってきました。

なぜ、これだけメリットをもらたらしてくれるリフレ政策が批判の的になってしまあのでしょう?

すでに既出の項目もありますが、最後にリフレ政策への批判を検証します。

 

 

✅ 批判①

リフレ政策は加熱し過ぎてハイパーインフレを起こしてしまう可能性がある為、危険である。

 

既出ですが、ハイパーインフレの定義を確認してみます。

ハイパーインフレーションの定義

国際会計基準では、3年間で累積100%(年率約26%)を『ハイパーインフレーション』と呼んでいる。

ただし具体的なインフレーション率の値によるのではなく、単に「猛烈な勢いで進行するインフレーション」のイメージを強調する際に用いるマスメディアも多い。

Wikipediaより引用

 

ハイパーインフレーションは国際会計基準では年率26%の事を指します。

 

しかし、前述したようにインフレ目標を設定する事で、ハイパーインフレも防いでしまいます。

 

物価目標に到達した時点で金融緩和から金融引き締めに転じる事で過度な物価の上昇を抑えるのです。

 

✅批判②

金融緩和を行って、銀行にお金を積み上げていっても世の中には出回らないので意味はない。

 

結論から言えば、説明したリフレーション政策の波及回路によってお金は世の中に廻ります。

ただ、たしかに金融緩和だけでは、波及ルートが限定されているために時間がかります。

 

✔️銀行が民間に融資を増やさない

✔️資産を増やした投資家が消費をしない

✔️企業が設備投資に慎重

 

この他にもさまざまな理由から、金融政策だけでは世の中にお金が流れるスピードはゆっくりとなってしまいます。

 

そこで、財政政策による減税や再分配政策をセットで行うのです。

政府が、さまざまな給付金で直接国民にお金を渡せばいいのです。

財源は国債発行であり、それを日本銀行が買い取ればまったく問題はありません。

 

参考記事:国の借金とは?

 

そのような再分配もせずに、消費増税のような個人消費を低下させる施策を行なえば、リフレーション政策の効果を削いでしまいます。

第二次安倍政権の失敗もここにあります。

 

つまりこの批判は、リフレーション政策への批判としてはナンセンスであり、原因は他にあるということです。

 

✅ 批判③

中央銀行は独立性を担保しなければいけない為、政府はインフレ目標の設定などに踏み込む事はしない方がよい。

 

これは前述の通りです。

かつて、さまざまな国において、政府が中央銀行をコントロールして戦争の資金を調達するという行為が多発しました。

これを教訓に、中央銀行は政府による管理を受けない独立性が必要だと言われるようになりました。

しかし、この批判も的外れです。

世界標準の中央銀行のあり方でも

手段の独立性=中央銀行

目標設定の独立性=政府

これは変わりません。

 

目標は、私たち国民の支持を受けて誕生した政府が決めなければいけません。

バブル崩壊以降の日本では、日銀法の改正によって目標の権限も中央銀行に与えてしまったばっかりに、失われた20年を作ってしまう原因となったのです。

 

リフレ政策の現在

 

世界標準のリフレ政策と財政の拡大をおこなえば、本来は日本経済をしっかりと成長軌道に乗せる事が可能なのです。

 

少子化、非婚化、社会保障費の増加、失業率の悪化、現代日本が抱える様々な問題も、経済を成長軌道に乗せる事で大部分が解決できるのです。

 

ところが、2020年現在のアベノミクスは、当初の金融政策こそ功を奏したものの、消費税率10%への引き上げと、コロナショックによって、甚大なダメージを受ける事になりました。

 

今、中央銀行の目標へのコミットメントはもはや存在しない言っても過言ではありません。

また2019年の10月には、消費税率10%に引き上げられ、緊縮財政はさらに進んでしまいました。

このような状態で、コロナショックが起こってしまったのです。

 

今こそリフレ政策の原点に戻り、2%までの物価目標の達成にコミットメントするべきです。

そして、自粛生活を余儀なくされた国民の収入の補填を大規模におこない、徹底した財政政策を打つ事が必要です。

 

以上のような理由から、リフレ政策は日本を救うという私の思いは、2020年現在でも変わっていません。

金融政策と財政政策のベクトルを合わせ

日本経済をコロナ危機から救う事

 

私は、まだまだ日本の明るい未来への選択肢が残っている事を、今もなお確信しています。

 

 

 


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