・経済は停止していたはずでは?
・株価が暴落してから上昇した理由を知りたいです!
本記事の結論
- 株価はコロナリスクを織り込んで暴落
- 対応として金融財政政策を拡大
- 結果として株価が上昇を続けた
目次
コロナ禍での株高はいつまで続くのか?
2020年は、世界的に新型コロナウイルスが拡大し、経済的にも厳しい一年となりました。
同年3月には、株式市場にも悲壮感が蔓延し、株価は大暴落を喫して世界的なコロナショックを目の当たりにします。
その悲壮感も年末には一変し、株式市場はバブル崩壊以降では最高値を記録して2020年を終えました。
これは一体、何が起こったのでしょうか?
大きくは下記の要因が考えられます。
①:世界的な金融政策の拡大
②:世界的な財政支出の拡大
③:個人マネーの流入
当記事ではこれらをひもとき、今後の見通しをわかりやすく解説します。
①:世界的な金融政策の拡大
まず第一の要因は、世界的な金融政策の拡大です。
簡単にいえば、世界各国が自国通貨を大量に発行したのです。
日本も含めて世界の国々は、コロナウイルスによる消費減退の影響によってデフレ経済への転落を避けるために金融政策を拡大しました。
つまり、世界各国はマネタリーベース(通貨供給量)の拡大して、これが株価上昇の要因となったのです。
参考記事▶︎【マネタリーベースとは?】図解でわかりやすく解説
※金融政策の拡張は、資産価格の上昇に直結します。この関係を知らない方は下記のリンク記事を参照ください。▼
今回は世界的に金融政策が拡張され、アメリカの代表的株価指数であるニューヨークダウが史上最高値を更新し続け、日本もバブル崩壊以降の最高値である日経平均株価3万円を達成しました。
日本のマネタリーベース
日本は、アベノミクスが開始されたときの拡張期以降では、2020年にマネタリーベースは初めて拡大に転じました。
ご覧の通り、2020年の4月以降は日本銀行の金融政策によって大きくマネタリーベースが拡大されました。
アベノミクス拡張期であった2014年以降に下がり続けていたマネタリーベースの拡大変化率も上昇に転じています。
画像引用元:ニッポンの数字
株価をはじめとする資産価格は、将来への期待を織り込んでいきます。
これだけのお金を発行したのだから
アフターコロナは景気が良くなるだろう
こんな見通しが世界の株式市場に起こり、発行されたマネーが株式市場に集中した側面があるのです。
世界的な財政支出の拡大
金融政策で発行した通貨は、国民に行き渡ってこそ効果的な経済政策といえます。
新型コロナウイルスの感染拡大によって大量の失業者を出した世界各国では、大規模な財政政策をおこない自国民の生活が困窮しないようにしました。
これまた自国が不況に陥らないように実施された大規模な財政政策が世界の株高を後押ししました。
給付金や失業保険、休業補填といった形でどんどん自国にばら撒かれた金は、さまざまな方向に向かいます。
日本国内でも、2020年はさまざまな形で財政支出(補正予算真水100兆円規模)がおこなわれました。
✅雇用調整助成金
✅持続化給付金
✅一律10万円給付
その他にも無利子での融資等も行われてました。
新型コロナウイルス感染拡大による不景気の特徴は、集中的な需要ショックにあります。
コロナショックは、平成バブルの崩壊やリーマンショックと比べても極めてわかりやすい需要ショックによる不景気であり、ウイルスが収束すれば経済は元通りに動くという予測がある程度働くことになります。
ということは、財政政策によって国内に供給したマネーが近い将来には消費や投資に回るだろうという予測が成り立ちます。
この為、株式市場はアフターコロナを織り込む形で資産価格が上昇し、2020年11月、アメリカの大手製薬会社がウイルスワクチンの開発に成功したニュースをキッカケに、さらに株価が上昇する事となりました。
私個人としては、まだ日本政府による財政支出はコロナショックによって失ったGDPギャップを埋めるには足りないと感じています。
ただあくまでも株価は将来への予測を織り込んでいきますので、アフターコロナへの期待感が先行していると考える事ができるのです。
個人マネーの流入
さらに、日本の株式市場には新しい投資家が多く流入しました。
ここには、コロナショックによって株価が暴落した事やリモートワークが定着した事も一つの要因とされます。
下記は日経新聞記事からの引用です。
コロナショックによる株価急落で、3月はネット証券の新規口座開設が急増。
大手のSBI証券の月間新規口座開設数は12万口座、楽天証券は16万口座に達し、いずれも過去最高を記録した。
株価急落を資産形成を始める好機とみて口座開設に踏み切った個人の動きが、調査結果からも読み取れる。
コロナショックが起こった2020年4月からは、株式市場の新興市場は空前の上昇トレンドに転換しました。
画像:新興市場 東証マザーズ月足チャート 黄色部は3月、4月の転換点
個人投資家の主戦場である新興市場が活況になったという事は、新しい個人投資家の流入も日本の株高を作った要因の一つと考えられます。
とは言え、株式市場の全体で見れば新しい個人投資家による株式市場への参入が2020年の株高にどれほどのインパクトがあったかと言えば、そこまで大きいものではないでしょう。
なぜなら日本の株式市場の売買の大半は、国内機関投資や海外の機関投資家が占めているからです。
いずれにせよ、金融政策と財政政策によって世の中に流出したマネーが、個人投資家を含めたあらゆる所から株式市場に流入した事が株高に繋がったと考えることができるでしょう。
株価の見通し
これから株式投資などを通して資産運用を考えている人にとっては、この株高がいつまで続くかが気になる事でしょう。
ここまで読んだ方はすでにお分かりかと思いますが、予測するポイントは以下の4つにしぼられます。
①:金融緩和政策の終了時期
②:財政拡張政策の終了時期
③:世界各国の金融財政政策
④:新型コロナウイルスの収束時期
このまま日本と世界の金融財政政策が拡張を続ける限りは、基本的に株高も続くことが予想されます。
当然、コロナウイルスの収束の時期も大きな影響があるでしょう。
日本の株式市場で言えば、2021年中に東京オリンピックが開催されるかどうかも株高が続く時期を予測する上で極めて重要です。
2021年1月現在では、再び一都三県に緊急事態宣言が実施され、アメリカの大統領選挙にて民主党バイデン候補の当選が正式に決定しました。
年初から大きく動き出している世の中ですが、現時点から予測しうる2021年の株価の行方について考えてみます。
株高が続くシナリオ
これらの現時点での材料から、私が考える日本の株高が続く最高の2021年のシナリオは以下のような場合です。
✅コロナワククチンの早期浸透によってオリンピックが開催される
✅バイデン政権の経済政策も拡張が続き、日米関係が親密になる。
✅自民党政権が秋の衆議院選挙にて減税を含めた財政支出の拡大を掲げて圧勝する
✅2021年もマネタリーベース増加率が前年比プラスで終了する
これだけの事があれば、日本の株式市場の株高が続くことはもちろん、2022年にはアフターコロナの好景気が訪れる事も十分に予想されます。
株高が終わるシナリオ
一方で、株高が年内で終了するシナリオもあります。
✅コロナの変異者にワクチンが効かずに、早期(年内)の収束が困難になる
✅東京オリンピックの開催が中止になる
✅アメリカバイデン政権の経済政策が緊縮に転換してアメリカ市場が暴落する
✅世論に自民党政権への不満が爆発して秋の衆議院選挙で大きく議席を減らし、経済政策への実行力が低下して金融財政政策が緊縮方向に転換する
これは、私が現在想定し得る株式市場にとっての株安のシナリオです。
こうなれば株高が終わる事はもちろん、株式市場が長期的な下落局面に入り、日本経済が停滞する恐れも十分にあります。
まとめ
当然ながらこれら2つのシナリオは両極端な例であり、さまざまな状況が混ざり合うことでシナリオは無数に用意されています。
いかなるシナリオでも、繰り返しとなりますが株高に関して1番注目すべき点は、日本政府と日銀による金融政策と財政政策の方向です。
ここさえ適切に実施されていけば、基本的には株高が続く方向となるでしょう。
金融政策の方向を知るには、マネタリーベースの増加率を確認します。
前述したサイト『ニッポンの数字』がわかりやすくてオススメです。
財政政策の方向は、国会で審議される財政支出予算の大きさによって確認できます。
国会で年度予算や補正予算が組まれると必ずニュースで報道されますので、チェックが必要です。
※財務省のホームページでも確認が可能です。
前回の予算より伸びているかどうか?
GDPギャップを埋められるだけの額が組まれているか?
それらの視点から財政政策を確認できれば、株価のシナリオを予想する上で力を貸してくれるでしょう。