・目的はなに?
・景気との関係までわかりやすく知りたいです!
本記事はこんな疑問を解消します。
本記事の結論
- YCCは国債金利目標の誘導政策
- YCCは2016年から導入
- イールドカーブは利回りと償還期間の関係を示した曲線
目次
YCCとは?
YCCとは日本銀行が実施する金融政策の1つで、イールドカーブコントロール(yield curve control)の英語の頭文字を取った略称です。
YCCは国債の※長短金利を操作することでイールドカーブをコントロールすることが目的として導入されました。
※長短金利
短期金利・・・1年以下
長期金利・・・10年
日本でのYCCは、2016年に大規模な金融緩和政策の効果を補完する目的として導入されました。
YCCの具体的な手法として、短期金利はマイナス金利を適用し、長期金利は公開市場操作を使って10年物国債の金利を0%程度になるように誘導します。
YCCは2013年に始まった経済政策アベノミクスによる大胆な金融政策の効果を高めて、デフレ脱却へのコミットメントを強化するために導入されたのです。
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イールドカーブとは?
イールドカーブとは『利回り曲線』ともいわれており、債券の利回り(金利)と償還期間との関係性を示したグラフのことです。
償還(しょうかん)期間
債券の保有者に額面金額が払い戻される満期日までの期間のこと
金融政策のイールドカーブコントロールでいう債券利回りは国債金利のことを指します。
YCCはこのイールドカーブを一定の範囲内にコントロールすることで、これによって国債金利を調整して景気をコントロールする金融政策のひとつなのです。
それではイールドカーブ(利回り曲線)にはどんな形があるのかを見ていきましょう。
順イールドと逆イールド
イールドカーブには大きく分けて2つの形があります。
イールドカーブの形
- 順イールド
- 逆イールド
それぞれ解説しますね。
①:順イールド
順イールド
短期金利 < 長期金利
順イールドは、イールド・カーブの形状が右上がりになることをいいます。
順イールドのときは、長期金利が短期金利よりも高くなることを表しています。
②:逆イールド
逆イールド
長期金利 < 短期金利
逆イールドは、イールド・カーブの形状が右下がりになることをいいます。
逆イールドでは短期金利が長期金利より高くなることを表しています。
画像:国債の期間分類
YCCとは?
イールドカーブが理解できたところで本題です。
YCCとはイールドカーブコントロールの英語スペル(yield curve control)の頭文字を取ったもので、長期金利と短期金利を誘導することで目標の水準を維持する政策のことです。
金利水準の操作方法はそれぞれ以下のようにして実施されます。
①:長期金利
公開市場操作(オペレーション)
②:短期金利
日銀当座預金の金利の調整
それぞれ解説しますね。
①:長期金利と公開市場操作
国債長期金利は公開市場操作(オペレーション)によって誘導されます。
公開市場操作
中央銀行が金融市場で民間金融機関との間で行う国債等の売買や資金貸し付けなどの取引のことでオペレーションとも呼ばれる。
中央銀行が民間金融機関から国債などを買い取ることを『買いオペレーション』民間金融機関に国債などを売却することを『売りオペレーション』といいます。
中央銀行が国債を買い取れば国債価格が上昇するため国債金利が低下します。
反対に中央銀行が国債を売却すれば国債価格が下がるため国債金利が上昇します。
オペレーションと金利
- 買いオペ▶︎金利は低下
- 売りオペ▶︎金利は上昇
②:短期金利と日銀当座預金利率の操作
国債の短期金利は当座預金預金の中にあるお金にかかる利率を調整することで操作されます。
当座預金とは日本でいえば日銀当座預金がそれにあたります。
日銀当座預金
金融機関が日本銀行に開設している当座預金のことで、金融機関同士や日銀、国との決済手段などに利用される。
日銀当座預金の中にあるお金の金利を操作すると短期国債の金利が変化します。
なぜなら短期金融市場では日銀当座預金残高を持つ金融機関は、その当座預金金利を上回る取引きをすることで収益を得ようとするからです。
日銀によるYCC
それでは2013年アベノミクス以降に日本で導入された金利操作について解説します。
マイナス金利政策の導入
2016年1月にイールドコントロールに先立ってマイナス金利政策が導入されました。
日本銀行はマイナス金利政策で、日銀当座預金残高の1部に−0.1%のマイナス金利を適応しました。
これはこれから日銀が民間銀行に供給していく日銀当座預金の中のお金の1部にマイナスの金利をかけることで、民間銀行の市中へ貸し出しを促すために実施されました。
また前述したとおり日銀当座預金内の金利を下げると短期市場には利下げの圧力がかかります。
マイナス金利政策によって短期国債の金利は−0.15%まで下落しました。
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YCC
マイナス金利の導入から8ヶ月後の2016年9月にはYCCが開始し、長期国債金利を0.25%の上限を設定されました。
2016年に実施されたYCCは、長期国債の上限が0.25%を超えないように買いオペレーションによって操作されました。
2022年12月には長期国債金利の上限が0.5%にまで拡大されて、イールドカーブのゆがみを是正する政策が取られました。
2023年の7月現在では、さらなるYCC上限の拡大が実施されるのかが日銀政策決定会合の焦点となっています。
日銀政策決定会合
日本銀行の政策委員会の会合のうち、金融政策の運営に関する事項を審議・決定する会合のことで年8回、各会合とも2日間開催される。
日銀政策決定会合のYCCは下記リンクの日本銀行ホームページにて公表されます。
追記
2023年7月28日の日銀政策決定会合では、YCCの変動幅は±0.5%を『目処』に金融政策に柔軟性をもたせる政策変更を実施しました。
日本銀行の植田和男総裁は28日、イールドカーブコントロール(YCC、長短金利操作)政策の運用の柔軟化について、金融政策の正常化に向けた措置ではないとの見解を示した。金融政策決定会合後に記者会見した。
植田総裁は、長期金利の上昇抑制を目的に国債を買い入れる指し値オペの利回り水準引き上げなどの柔軟化について「政策の正常化へ歩み出す動きではなく、YCCの持続性を高める動き」と説明。2%の物価安定目標に「到達できる確率を高めようという措置」と述べた。
いずれにしても、YCCの上限の設定は長短期の国債金利を低く抑えて、インフレを促し、大胆な金融政策を支える形となっていたのです。
まとめ
本記事のまとめ
- イールドカーブとは利回りと償還期間の関係を表した曲線
- イールドカーブコントロールは国債金利の目標値を設定して誘導すること
- 長期金利は公開市場操作(オペレーション)によって操作
- 短期金利は日銀当座預金金利によって操作
- 2016年からイールドカーブコントロールが開始された
- 日銀当座預金の1部にマイナス金利が適用
- 長期金利の上限が0.25%に設定された