目次
大胆な金融政策とは?

2013年から開始された第2次安倍内閣によるアベノミクス。
その本丸となる1本目の矢、大胆な金融政策を出来るだけわかりやすく説明します。
※ここで説明する大胆な金融政策は、第2次安倍内閣発足後の2013年4月に導入が決まった『量的・質的金融緩和』から始まる金融緩和政策を指します。
大胆な金融政策の目的は?

アベノミクス一本目の矢、大胆な金融政策とは一般的に量的・質的金融緩和の事を指します。
この金融緩和政策をざっくりと上記の画像にまとめましたが、シンプルに言えばこの大胆な金融政策が変えた事はたった一つです。
✅世の中に供給するお金の量を増やす
これだけです。
アベノミクスで行われた量的・質的金融緩和によって、世の中に供給するお金を大きく『大胆に』増やしました。

画像:マネタリーベース推移(出典:一億人の投資術)
日本銀行がここまでの大胆な資金供給に踏み切ったのには理由があります。
日本経済にインフレを起こすため
インフレーションとは、物価が上がっていく現象を指します。
一般庶民にとって苦しいはずの物価の上昇(インフレ)を、なぜ恣意的に起こそうとするのでしょうか?
それは
『マイルドがインフレが経済に好循環を生み出すから』
これだけです。
インフレによる経済の好循環は、一般庶民に雇用の改善や、賃金の上昇といった形で恩恵を与えます。
つまり、大胆な金融政策は、日本の長引くデフレ不況から脱却し、マイルドなインフレ経済に持っていく為に行われたのです。
参加記事:デフレの原因とは?
大胆な金融政策が変えた事
量的・質的金融緩和によって、日本経済にはさまざまな現象が起こりました。
① 株価の上昇
大胆な金融緩和によって2013年から2017年の間に大幅に上昇しました。
画像:日経平均株価の長期推移
これを見ると、インフレと経済成長はセットで起こり、デフレと共に経済が停滞する事がわかります。
平成バブルの最高値をピークに低迷していた株価が、アベノミクスによる大胆な金融政策によって再び上昇トレンドに転換したのです。
1万円を下回っていた日経平均株価が、約2年間で倍以上に変貌しました。
② 為替が円安に転換
株価と同様に、為替も円安に転換します。

リーマンショックによる円高に苦しむ日本経済が、大胆な金融政策によって急速に円安に傾きました。
マネタリーベースを拡大する事は、日本円を世の中に供給するという事です。
そうなれば、日本円の他国通貨に対する希少価値が下がります。
つまり、円安が発生するのです。
③ 雇用の改善
株価と為替の急激な変化に追随するように変化したのが、雇用情勢の急速な改善です。

これは、民主党政権期とアベノミクス期の完全失業率をグラフ化したものです。
これだけ見ると、完全失業率の低下はアベノミクス以前から始まっているように見えます。
次は、就業者人数に目を向けてみます。

画像作成者:高橋洋一氏
明らかに、金融緩和政策によって就業者数のトレンドが転換しています。
確かに、2008年に発生したリーマンショックによって大幅に悪化した失業率がリバウンドによって最悪期より『マシ』になっていました。
しかし、就業者人数で見ると、上記のように金融緩和政策の効果が明確なのです。

画像作成者:高橋洋一
これは、就業者人数と、半年前の日経平均株価の動きを重ねたグラフです。
面白いことに、就業者人数は半年前の日経平均株価と連動しています。
通常、株価は実体経済よりも早く動きますが、株価と雇用は明らかに相関関係にあります。
このように金融緩和政策は、雇用情勢に明確に働きかけるのです。
④ 自殺者数の低下
雇用が改善されれば、自殺者数が低下する事は想像に難しくないでしょう。

画像:産経新聞
1997年、日本が本格的にデフレ不況に突入した時期から、日本の自殺者数は3万人を超えました。
これが、2013年の大胆な金融政策の実施以降、急速に改善したのです。
金融政策前に3万人を超えていた自殺者数が2018年には、なんと2万598人と9年連続で減少しました。
大胆な金融政策によって実に何万人という命が大胆な金融政策によって救われたと言えるのです。
インフレが景気を好転させる理由
それでは、なぜインフレーションを起こすと景気が良くなるのでしょうか?
それは、インフレ環境下では
世の中の需要がお金よりも物に向く
からです。
簡単に図を作成して解説します。

インフレ下では、今年100円で買えた缶コーヒーが来年には値上がりしてしまいます。
今回は、1年間で10%のインフレが起こったと仮定しましょう。
そうなると今年100円で購入できた缶コーヒーが、来年には110円のお金が必要になります。

つまり、お金の価値が10%減価してしまうのです。
来年に今のお金の価値が下がってしまうとしたら、今年のうちに物を買っておきたくなりませんか?
あるいは、お金を貯金よりも投資に回したくなる人もいるでしょう。
このように、マイルドなインフレ下では人々の需要がお金よりも物に向き、消費や投資が活性化するのです。
結果として、景気が良くなるのです。
(10%のインフレ率はわかりやすいように設定したもので、実際に起こればやや行き過ぎと言えます。)
デフレ不況は、この正反対の現象です。
不景気で人々が職を失ってしまう原因の根本は、世の中の需要が物ではなくお金に向いてしまっているからなのです。
そうなれば、人々にとってはお金を消費よりも貯金に回す方が合理的な環境となります。
結果的に、世の中のお金の流れは悪くなり、企業は赤字を重ね、賃下げやリストラが発生する事になります。
このように、金融緩和によってマイルドなインフレを作る事で、景気循環を好転させて活気のある経済を作る事が出来るのです。
つまりマネーを供給する事で、世の中全体のお金の量を増やし、物に対する希少性を作り、人々の需要を物に向かわせる。
それが、アベノミクス 一本目の矢である大胆な金融政策の目的だったのです。
金融緩和の副作用は?
これだけ、いい事づくしの金融緩和政策ですが、副作用やデメリットはなんなのでしょうか?
金融緩和の副作用は一つだけです。
インフレーション
です。
量的・質的金融緩和は、市場にマネーを放出する事によって、世の中の貨幣量を増やし、貨幣価値を下げる政策と言い換える事ができます。
つまり、通貨(円)の価値が下がり、物の価値(物価)があがるインフレになるのです。
しかし、過度なインフレを防ぐために、日本銀行は物価目標を設定しました。
それが、2%のインフレターゲット(物価目標)です。
つまり、インフレによる副作用を防ぐために、2%の目標を設定し、これを達成できれば金融緩和を停止するという方法です。
金融緩和をやり過ぎると、ハイパーインフレが起こるというアベノミクスへの批判を良く耳にしますが、これらの批判はインフレターゲットの存在を知らない人によるものでしょう。

参考記事:ハイパーインフレについて
大胆な金融政策の成果
それでは、最後に大胆な金融政策の成果について解説します。
この大胆な金融政策は開始当初の効果に関しては目覚ましいものがありました事は、前述した通りです。
しかし、この金融政策の効果を大きく削いでしまう出来事がありました。
それが、2014年4月に実施された消費税率8%への引き上げるです。
これによって、せっかく良くなって来ていた消費者のマインドは一気に冷え込んでしまったのです。

画像:会社四季報オンライン
参考記事:消費増税は日本経済を破壊する
これは、8%増税の消費支出への影響をグラフ化したものです。
2014年3月の駆け込み需要の後、増税での落ち込みが前年比を大きく下回っている事がわかります。
金融緩和政策によってアクセルをふかした日本経済でしたが、消費税率の引き上げによって、個人消費に急激にブレーキをかけてしまいました。
アベノミクス第1本目の矢である大胆な金融政策が、雇用情勢を好転させたのは紛れもない成果と言えます。
しかし、その効果の半分近くを削ぎ取ってしまったのが消費増税です。
もしアベノミクスに消費増税政策を加味するのであれば、大胆な金融政策の結果に対する私の見解はシビアなものです。
2019年10月、消費税率は10%に引き上げられました。
これも日本経済にとってかなり危険信号とも言えます。
再びデフレ不況に戻ってしまえば、せっかく好転した雇用もまた悪化していく事になってしまいますので注意が必要です。
参考記事:なぜ財務省は緊縮財政をやめないのか?
大胆な金融政策自体は、日銀による長引く金融引き締め政策を大きく転換させ、大きな成果を日本経済にもたらしたと考えています。
私が1番怖い事は、消費税の増加をはじめとした緊縮財政が日本経済の腰を折り、その景気停滞が金融緩和政策のせいにされる事です。
大胆な金融政策は、長引く日本のデフレ経済に対してとても有効であり、明確にインフレに転換しないのであればまだまだ追加金融緩和が必要だと思います。
しかし、その前に財政政策の緊縮を転換する必要があるというのが、現時点での私の立場です。(2019年12月)
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