・目的は何?
・効果についてもわかりやすく知りたいです!
本記事はこんな疑問を解消します。
本記事の結論
- オーバーシュート型コミットメントはインフレ目標の安定的な達成を約束
- 金融緩和の補完的措置
- 景気は期待や予想で動く
目次
オーバーシュート型コミットメントとは?
オーバーシュート型コミットメントとは2016年に日本銀行が導入した金融政策のことで、日銀がインフレ目標(2%)を安定的に超えるまでマネタリーベースの拡大をおこなうことへのコミットメントを指します。
よりシンプルに言えば、インフレ目標を『継続的に』超えるまで金融緩和をやりますよという日本銀行による宣言といえます。
つまりインフレ率が目標値をオーバーシュートまで金融緩和の継続をコミットメントすることで金融政策の効果を最大化しようとした政策なのです。
オーバーシュート型コミットメントの目的
オーバーシュート型コミットメントの目的は日本銀行のインフレ目標の達成への強い姿勢をしめすことです。
より具体的にいえばオーバーシュート型コミットメントは、2016年の同時期に導入された政策『長短金利操作付き量的・質的金融緩和(イールドカーブコントロール)』を補完する目的として導入されました。
中央銀行のコミットメントが景気に影響する理由
これは結論からいえば予想インフレ率を高めるためです。
予想インフレ率
予想インフレ率とは市場や投資家が予想しているとされるインフレ率のことで期待インフレ率とも呼ばれている。
そもそも景気とは世の中の人びとの気分に大きな影響を受けます。
たとえば、私たち消費者の購買意欲がそれにあたります。
将来にわたってインフレが加速することが予想されると世の中には『安いうちに買っておこう』という心理が働きます。
これは企業も同じで、インフレが加速して消費が増える見込みがたてば設備投資や人材投資を安いうちにしておこうという心理が働きます。
つまり、オーバーシュート型コミットメントは市場に『これからインフレが来る』と信じてもらうために実施されるのです。
-
予想インフレ率(BEI)とは?【わかりやすく解説】
目次1 予想インフレ率とは?2 金融政策と予想インフレ率3 ブレーク・イーブン・インフレ率3.1 固定利子債(こていりつきさい)3.2 物価連動国債(ぶっかれんどうこくさい)4 BEIの推移5 BEI ...
続きを見る
期待が景気に波及する経路
それではここで、オーバーシュート型コミットメントが作る『期待』がどのようにして景気に波及していくかを解説します。
金融緩和政策とインフレ目標へのコミットメント(オーバーシュート型コミットメント)はその両方を実施して効果が最大化します。
2013年から開始されたアベノミクスでは図のように金融緩和は主にマネタリーベースの拡大によって実施されました。
要するに効果を発揮する金融政策はこの2つの両立です。
効果を発揮する金融政策
- 金融緩和
- インフレ目標へのコミットメント
この2つによって、市場にはインフレ予想が形成されるのです。
金融政策の波及経路
- 金融緩和とコミットメント
- 予想インフレ率↑
- 実質金利↓
- 資産価格↑
- 投資や消費↑
- 企業の売上↑
- 雇用の改善↑
- 物価や賃金↑
このように2016年に導入されたオーバーシュート型の目的は金融政策の効果を世の中全体に波及させるために行われたのです。
オーバーシュート型コミットメントの成果
それでは最後にオーバーシュート型コミットメントの成果を解説します。
金融政策の目的が雇用の改善であるとすれば、オーバーシュート型コミットメントは大成功をおさめたと言えます。
下記は2013年から開始されたアベノミクス大胆な金融政策の前後の雇用情勢の比較です。(※数字は2012年▶︎2018年)
雇用の改善
- 【完全失業率】4.2%▶︎2.4%
- 【就業者人数】約400万人増
- 【有効求人倍率】0.8倍▶︎1.6倍
厳密にはオーバーシュート型コミットメントは2016年から金融緩和政策を補完する形で実質されましたが、2013年開始当初からインフレターゲット政策を実施しています。
2016年に日本銀行は目標達成へのコミットメントの弱まりを危惧してオーバーシュート型コミットメントを導入しましたが雇用の改善だけを見ても大成功をおさめたといっても差し支えないでしょう。
-
アベノミクスとは?【わかりやすく解説】
・アベノミクスって結局何だったの? ・具体的に何をしたの? ・成果や課題をわかりやすく知りたいです! 本記事はこんな疑問を解消します。 本記事の ...
続きを見る
まとめ
本記事のまとめ
- オーバーシュート型コミットメントは金融緩和の補完措置
- 中央銀行が目標にコミットすることでインフレ予想を高める
- 物価目標の達成によって雇用は改善する