『ドラマ・東京ラブストーリー』にみる日本の課題

東京ラブストーリー

 

『カーンチ!』

 

画像:MASAPANLAND

 

鈴木保奈美が演じる赤名リカ。

1991年1月からフジテレビ系で放送された大ヒットドラマ、『東京ラブストーリー』の主人公である。

キャッチコピーは

東京では誰もがラブストーリーの主人公になる

 

平均視聴率約22%、最終回は視聴率33%で、「月曜の夜は街からOLが消える」と言われ、社会現象になった伝説のドラマだ。

このドラマを生み出した時代背景と、大ヒットした世相は、将来日本がぶつかる大きな問題を肯定するにふさわしい条件を整えていた。

 

ー少子高齢化ー

 

一見すると何も関係なさそうな、いや、むしろ劇的な恋愛を背景にして少子化対策ともなり得るようなドラマのヒットが、なぜこの少子化問題と関係があるのか。

その理由を考えてみたい。

 

※ドラマの結末の記載もあるので注意頂きたい。

参考記事:少子高齢化の原因とは?

 

 

時代背景

 

 

ドラマは、アメリカに住んでいた経験を持ち、自由気ままに生き、恋愛にもまっすぐな赤名リカ(保奈美)が主人公。

そんなリカに好意を寄せられるリカの同僚・永尾完治(織田裕二)や完治の高校の同級生・三上健一(江口洋介)、同じく完治の高校の同級生で完治が思いを寄せる関口さとみ(有森也実)、三上の大学の同級生・長崎尚子(千堂あきほ)らが複雑な恋愛模様を織りなすラブストーリー。

引用元

 

出典:ガールズちゃんねる

 

時はバブルの真っ只中。

ドラマが放送される5年前には男女雇用機会均等法が施行され、女性の社会進出が進む最中だった。

さらにバブル経済は女性の社会進出を後押しし、主人公『赤名リカ』のようにバリバリ働くキャリアウーマンはこの時代に脚光を浴びたのである。

参考記事:バブルの生成と崩壊について

 

この頃は自由恋愛の熱狂がピークに達し、結婚への認識が世代間で大きく乖離した時代とも言えよう。

戦前生まれの年配者が多く存命していた時代に、バブル景気と世界的な男女平等への風潮で育った若者との世代間の感覚に乖離が生まれるのは当然である。

 

自由恋愛至上主義女性の社会進出

 

この2つのキーワードは、経済的要因をのぞく現代の少子高齢化問題を考える上でとても重要だと考えている。

 

恋愛至上主義と見合い婚の衰退

 

出典:ガベージニュース

 

これは、恋愛結婚と見合い結婚の構成比の推移である。

1960年代に見合い結婚と恋愛結婚が逆転し、恋愛結婚が主流となる。

その後も見合い結婚は減り続け、東京ラブストーリーが放送された1991年には約13%という水準まで下火になっている。

 

対して恋愛結婚は91年には約85%に達し、恋愛至上主義が絶頂を迎え、あの『東京ラブストーリー』が生まれたと言えるだろう。

第二次世界大戦の敗戦によって西洋文化の流入し個人の自由が尊重された結果、人々の価値観は大きく変化した。

 

そんな時代に人々がドラマティックな自由恋愛を選ぶのは至極当然である。

作中で、千堂あきほが演じる『長崎尚子』は、親の勧めで結婚が決まる事に対してこう嘆いている。

「親の決めた人と好きでもないのに結婚する。いつも誰かがさらってくれるのを待っていた。このまま結婚したくない」

 

このセリフは見合い結婚が下火となった1991年に、多くの女性の共感を得た事は想像するには容易である。

バブルの末期である1991年は、同時に見合い結婚の終末でもあった。

 

見合い結婚の衰退、すなわち世の中の結婚への価値観の変化が、実は大きな問題を生むこととなる。

 

出生率の減少

 

出典:Wikipedia

 

これは出生率と数の推移をグラフ化したものだ。

見合い結婚比率のグラフと照らし合わせてもらえれば一目瞭然、見合い比率の低下と出生率の低下はほぼリンクしているのである。

 

なぜこのような事が起こるのであろうか?

 

見合い結婚の減少は、非婚化を促進させるのではないか?

 

出典:読売新聞オンライン

 

これは男女別の生涯未婚率(50歳時点で一度も結婚の経験を持たない人の比率)の推移である。

 

戦前から戦後にかけて、見合い結婚が過半数だった頃は生涯未婚率が2%を切っていた。

それが、見合い結婚と自由恋愛の比率が逆転した1960年代を境に急上昇を遂げる。

それでも、東京ラブストーリーの時代では男女ともに5%程度であった生涯未婚率が、そこから2019年現在までに男性はおよそ5倍の25%にまで上昇したのである。

つまり、4人に1人は生涯未婚というショッキングな現実だ。

 

結婚の自由が保障される時代は、一方で結婚しない自由も保障する。

加えて、結婚に対して恋愛による道が一本化された結果、パートナーが見つからないまま時が過ぎる人が激増した。

追い討ちをかけるかのように、日本経済は1991年にバブル崩壊を迎え、失われた20年に突入する。

仕事に追われても収入は増えず、パートナーを見つける余裕すらも無くなっていくのである。

 

参考記事:失われた20年とは?

 

男女別の非婚化要因

 

男性の生涯未婚率が1990年あたりを境に女性を抜き、そこから現在に至るまで凄まじい勢いで上昇しているのがわかる。

ちょうど東京ラブストーリーが放送され、世の中がバブルで沸いた時代だ。

男性にとっての結婚への道は、収入に大きく影響されてしまう。

これは、バブル崩壊以降に男性の生涯未婚率が急上昇していることを見ても容易に想像できる。

不況による自殺率の上昇も男性が圧倒的に高く、男性にとっての経済的疲弊は生命と尊厳に深く関わる問題となる事が分かる。

 

対して、女性はどうか。

女性はむしろ、収入が高くなるほどに未婚率が高くなる傾向がある。

 

これは年収別に見た男女の生涯未婚率である。(2012年)

 

これもまたクロスが明確である。

男性は年収が高まる程に未婚率が低下する事に対して、女性は年収が高まるほどに未婚率が上昇している。

特に400万円以上の未婚率は20%を超えている。

 

ここで東京ラブストーリーに話を戻そう。

鈴木保奈美が演じる赤名リカは、自由奔放で恋愛に一直線、ロサンゼルスからの帰国子女。

永尾完治(織田裕二)よりも仕事が出来てしまう程のバリバリのキャリアウーマンである。

恋愛に対して保守的な感覚を持つ永尾完治に対して、熱烈に、また一直線に完治に恋をする自由主義的な感覚を持つ赤名リカ。

 

リカが完治に投げかけた

「ねぇ、セックスしよ!」

このセリフは、当時の視聴者に衝撃を与えると同時に、赤名リカの自由奔放な役柄を物語っている。

 

この2人の感覚の違いに揺さぶられながらドラマは展開していくが、永尾完治は、幼なじみであり恋愛に保守的な感覚を持つ関口さとみ(有森也実)と結ばれた。

最終回にてロサンゼルスに発った赤名リカは、3年ぶりに夫婦となった永尾、関口と偶然に再会する。

赤名リカは未婚のまま、変わらずバリバリ働くキャリアウーマンとして活躍している様子が伺えた。

 

この「赤名リカ」が当時の若者に絶大な人気を得る事となった。

女性の社会進出の明確なスタートラインとなった世相とマッチしていたのだ。

ドラマの大ヒットは、国連による男女差別撤廃条約の流れの中、日本も導入した男女雇用機会均等法が施行された1986年から5年後の事である。

この『東京ラブストーリー』は男女平等や自由恋愛を背景に人気を博した一方で、世の中の人々が異性に求める感覚や、求める自身の性への理想と現実のギャップを浮き彫りにしたドラマである。

これは本筋からは逸れるので、また別で記事にしたい。

 

結婚する自由・別れる自由

 

東京ラブストーリーが放送された1991年は、バブルとその崩壊のみならず、結婚への価値観の逆転、女性の社会進出が明確となった、いわば日本のターニングポイントとも言える。

男性の晩婚化は、バブル崩壊後の失われた20年によって大きく進んだ。

追い討ちをかけるかのように、恋愛やコミュニケーションが苦手な男性への受け皿であった見合い結婚が廃れたことで、非婚化が大きく促進されたのだ。

 

女性の非婚化に対して大きなインパクトがあったものは自由恋愛至上主義の台頭である。

現代では、見合い結婚を選択するくらいならば、結婚をしないという選択をする場合が大半ではないだろうか。

また、コミュニケーションを苦手とする男性とは恋愛をする気にもならない、あるいはキッカケがないというのが現状である。

結婚しない自由は保証されている。

 

このようにして、長期的には戦後の価値観の逆転を起点として、1960年代、1990年代の2つの時点を超えて晩婚化、非婚化は完成したのだ。

 

自由と孤独はセットである。

非自由と賑やかさもセットである。

 

自由に生きて行くと言うことは、結婚を選択しない自由を選ぶ一方で将来的な孤独とも向き合う事となる。

私は自由に対しては絶対に保証されなければいけないと思う一方で、恋愛のみならず自由主義を至上の価値として賞賛する風潮は危惧している。

人間がルールや伝統に守られてきた歴史はたしかに存在している。

今もなお法律というルールなしでは国家は存続できないであろう。

 

見合い結婚中心の時代は、今から見ると非自由的であり嫌煙される対象である。

しかし、皆が結婚出来る世の中と、生涯未婚を貫く自由な世の中、どちらが幸せなのだろうか?

 

最後に、恋愛結婚と離婚率の関係に関する興味深いグラフを掲載する。

出典:東洋経済オンライン

 

自由恋愛の台頭によって別れの自由も保証された結果、離婚率も上昇する事となった。

家の家との繋がりであった結婚は、価値観の変化によって個人と個人による結婚が主となった。

そして、男女の『好き嫌い』が結婚の最大の要因となった事で、別れる理由は『嫌いになった』で充分になるのである。

バツ1、バツ2と言われる人が多くいる一方で、生涯未婚の人も増えている事は、恋愛至上主義の台頭による象徴的な現象である。

つまりコミュニケーションが得意でない人は結婚の入り口となった恋愛にたどり着けずに、結婚はいわるゆ『モテる』人の中で回っているという事である。

 

 

最後に

 

東京ラブストーリーは、この大ヒットが世の中を変えたのではなく、戦後の価値観が変わり、長い時間をかけて確立した価値観が分かりやすい形で人々に熱狂的に受け入れられたと言える。

 

失われた20年という経済衰退期からの脱却によって非婚化、少子高齢化が改善する事はあるだろうが、戦後のような出生率が経済の復活だけで実現する事は難しいだろう。

 

一方で、そろそろ人々は自由至上主義の蔓延に疲れて来たのではないか。

お見合い結婚が以前のように主流になる事は難しいとは思うが、結婚への道筋を恋愛以外にも用意する必要がある。

あるいは、恋愛へのレールに誰もが乗れるような環境や仕組みが必要であるが、人為的で建設的なものは私には見当たらない。

 

やはり、今できる事はデフレから明確に脱却する事。

大規模な子育て給付金を配布する事。

また、結婚に向かいやすい環境を整える事が必要である。

結婚しないの?と聞いたらパワハラなどと言われる昨今の風潮こそ、人々を結婚から遠ざけているのではないだろうか。

また、『若くして結婚したら不良』といった見方も変わっていけば良いと思っている。

これには、若くても結婚してやっていける、将来に希望が持てる世の中が必須である事は言うまでもない。

 

最後に、私は復古主義者でもないので自由主義に反対する気は全くなく、男女平等に異を唱えるつもりもない。

むしろ昔の制度や価値観をそのまま現代に戻そうとしても必ず失敗に終わるだろう。

しかし、さらなる少子高齢化、生涯未婚率の上昇がこれからも進むのであればそれは問題である。

 

時代に合った、簡単に乗れる結婚へのレールを敷くことは喫緊の課題であると私は考えている。

 

 


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