目次
円高と円安の違いを解説
円高・円安とは?
円相場(えんそうば)は円に対する外貨の相対的価値(為替レート)のこと。
通常は外貨1単位に相当する円貨額で表示する(通貨や市場によっては別の慣行もある)。
Wikipediaより引用
例えばあなたは今、100円を持っていてドルと交換したいと思っています。
この100円は外貨に対して、常に価値が変動しています。
その変化を円安、円高として表現します。
円安
1ドル100円→ 1ドル110円
昨日は100円を持っていれば1ドルと交換出来たが、今日は110円必要になったのでドルを獲得できなかった。
→ 100円の価値が下がった
円高
1ドル100円 → 1ドル90円
昨日は100円で1ドルと交換出来たが、今日は90円で交換が出来るので、1ドルを獲得してさらに10円のお釣りを貰った。
→ 100円の価値が上がった
※1ドル100円→110円の変化で数字が上がっているため、円高と勘違いする事が多いですがこれは円安です。ご注意ください。
為替レートがどのようにして形成されるのかは、参考記事をご覧下さい。
参考記事:為替レートはどうやって決まるのか?
リンク記事にあるように、外貨に対する日本円の価値は
外貨の量と日本円の量のバランス
で決まります。
希少性は通貨に関わらず価値を高めますから、以下の関係で表現できます。
日本円 > 外貨
= 外貨に対して日本円の量が多い
円安
日本円 < 外貨
= 外貨に対して日本円の量が少ない
円高
日本円が外貨に対しての発行量が少なければ、日本円には希少性が生まれます。
つまり、投資家からの需要が高まりますので日本円の価値が上がり、円高が生まれます。
通貨以外の商品でも、一般的に人々の需要があるものは価格が上がり、需要がないものは価格が下がります。
基本的には円安、円高の変化も、一般の価格決定要因と変わらないのです。
そして、その通貨の発行量を調節する政策を金融政策と呼びます。
参考記事:金融政策について
◎円の価値が下がる理由
・金融政策によって円の量が増える
・円が売られる
・外貨が買われる
◎円の価値が上がる理由
・金融政策によって円の量が減る
・円が買われる
・外貨が売られる
円安のメリットとデメリット
為替レートは常に取り引きされており価格が変動しています。
これは、当記事記載現在の為替レート(対米ドル)の動きです。
一本の縦線(ローソク足)の動きは1分間の日本円と米ドルのレートの変化です。
このローソク足の方向は
↑ 円安
↓ 円高
と言えます。
為替レートは24時間このような変化を繰り返しながら、長い時間をかけて大きくそのレートを変化させます。
ここでは、円安(日本円の価値が外貨に対して安くなる)についてのメリットとデメリットを考えてみます。
為替レートの変化は外貨に対する日本円の価値の変化であるため、外国との商品の取り引きである貿易にとって大きな影響があります。
画像出典:FUMADE
円の価値が下がれば、海外の物が高くなります。
反対に円の価値が上がれば、海外の物が安くなります。
同じ商品でも、日々変化する為替レートによって価値が変動するため、貿易に大きな影響があります。
円安のメリット
●輸出が増える(輸出企業の業績が拡大)
●外国人旅行客が増える(インバウンド)
●外貨建て資産の価値上昇
円安のデメリット
●輸入が減る
●海外旅行が値上がりする
●現金(日本円)価値の低下→インフレ
(このインフレは経済全体で見れば必ずしもデメリットとは言えません)
これらが、一般的に言われる円安のメリットとデメリットであり、円高ではこの反対になります。
とは言え日本経済全体を見れば、円安の方がメリットが大きのです。
ここからは、マクロ経済視点での説明に移ります。
円高デフレに悩まされた日本
これは、日本が1ドル360円の固定相場制から変動相場制へ完全に移行した時期からの長期的なドル円レートの推移です。
2020年現在は1ドル110円前後を推移していますが、ほんの30年ほど前までは250円程の円安だった事が確認できます。
そして、バブル崩壊後からの日本経済停滞期、いわゆる『失われた20年』を赤でマーキングしました。
このドル円の推移からは、
戦後日本の経済成長は1ドル360円の円安と共にあり、バブル崩壊後のデフレ不況は円高と共にあった
という事がわかります。
リーマンショック、東日本大震災の後のドル円レートは、実に76円32銭までの深刻な円高を記録しました。
この時の日本経済がどのように悲惨な状況だったのかは言うまでもありません。
ここからは、いかに日本が明るい未来の為に金融政策を行うべきか?を考えてみます。
この金融政策の手段を見極める事によって、為替や株式での資産運用の判断材料にもなってくれるはずです。
金融政策と為替レート
まずは、ここ最近のアベノミクスによる金融緩和を例にとって、円安株高が起こった仕組みを説明します。
参考記事:アベノミクスとは?
①大胆な金融緩和による円の大量発行
⬇︎
②為替レートが円安方向へ(円が売られる)
⬇︎
③インフレの予想と株価の上昇
⬇︎
④輸出企業の業績拡大
⬇︎
⑤雇用の回復
上記の経路によってアベノミクスによる金融緩和(円を増やす政策)は円安を生み、株価を上昇させて、雇用を回復させました。
画像:日経新聞電子版
これはアベノミクス開始以降(2012年末)の有効求人倍率と失業率の推移です。
完全失業率、有効求人倍率ともにバブル期並みの水準までまで改善しました。
次は、為替です。
円安と雇用の改善が一致しています。
次に為替と株価を見てみます。
画像:朝日新聞デジタル
そうです。
円安と株高も一体
なのです。
厳密には、円安株高が起こってから約半年に、雇用の改善が始まります。
これは、資産市場の変化が実体経済に影響を及ぼすにはタイムラグがあるからです。
とはいえ、アベノミクスによる資産市場と雇用情勢に変化が見られたように、ある程度の円安は日本経済に好影響を与える事がわかります。
資産運用と為替
それでは最後に為替の変動によって資産運用を行う方法を紹介します。
参考記事:資産運用について詳しくはこちら
◉FX(外国為替証拠金取引)
FXとは、「Foreign Exchange」の略称です。
元々は「外国為替取引」の意味ですが、最近では、「外国為替証拠金取引」を指し示すものとして一般的な言葉になっています。
FX(外国為替証拠金取引)とは、外国為替取引を「証拠金」で行う取引です。
「証拠金」は、取引を行う際に相手方に預け入れる「担保金」のようなものです。
FXは、将来必ず決済(反対売買)することが約束された「差金決済」という決済方法を採用した取引です。
ひまわり証券HPより引用
FXは、証拠金を準備すれば最大25倍までの資金を使った取引ができます。
元手が10万円あれば、250万円分まで外貨の取引が可能です。
証拠金を元手に更に大きな資金でで取引を行う事をレバレッジをかけると言います。
画像出典:ひまわり証券
株式投資における信用取引のレバレッジが最大3倍である事を考えると、FXは少ない元手でも大きく利益を上げられるチャンスがあります。
ただ、損失も大きくなりますのでFXはハイリスク・ハイリターンの資産運用方法と言えます。
レバレッジをかけ過ぎると予想が外れた時に損失が大きくなってしまうのでリスク管理は必須です。
経済動向を観察してリスク管理を適切に行う事が出来れば、スマートフォンでも簡単に出来るFXは資産の拡大に大きな力を貸してくれます。
また、前述した通りで為替レートは株価にも大きく影響します。
つまり、資産運用を行う上では為替レートの動きは極めて重要と言えます。
すでにお分かりかと思いますが、基本的に為替レートは金融政策によって方向が決まります。
ですから、中央銀行が行う金融政策の方向は必ず確認しておく必要があります。
特に大切なのは、マネタリーベースの変化率です。
マネタリーベースを単純化して表現すれば日本円の量です。
アベノミクスは、このマネタリーベースを拡大して為替を円安方向に持っていったのです。
現在のトレンドでFXや株式で資産運用を行うのであれば、金融政策の目安はこうなります。
金融緩和=円安株高
=ドル買い株買い
金融緩和引き締め=円高株安
=ドル売り株売り
金融政策は、最も資産市場に大きな影響を与えます。
しかし、もう一つ見逃せない政策があります。
それは、アベノミクスの二本目の矢である【財政政策】です。
特に、日本は消費税増税路線をひた走っていますが、これには注意が必要です。
基本的に、増税をはじめとする緊縮財政は円高要因です。
この緊縮財政は、世の中に出回る日本円を縮小させる政策です。
今のアベノミクスが今ひとつの成果が上がらないのは、財政政策の引き締めが原因です。
また2020年2月現在、新型コロナウイルスの世界的な流行が、世界経済全体への悪影響を懸念されて世界同時株安を引き起こしています。
世界的な金融不安が引き起こされれば、基本的に世界で安全資産と認識されている日本円は買われてしまいます。
つまり、円高になってしまうのです。
特に、2019年10月から実施された消費税率の引き上げは、日本経済に再び大きなダメージを与えました。
https://economy-and-assetformation.com/2020/02/19/negative-growth-gdp/
さらに、新型コロナウイルスが世界経済に与える影響は、短期、長期かは不透明ですが、甚大になる事が予想されます。
今回のコロナウイルスのように、経済は金融財政政策以外の外的要因にも大きく左右されます。
むしろ、その不確実な外的要因に対して、経済的ダメージを極力緩和するために金融財政政策を調整する必要があるのです。
FX、株式などの資産運用においては、このような外部要因と、金融財政政策の方向をしっかりと捉えて運用していく事が大切です。