
・国債金利とのちがいは?
・景気との関係についてわかりやすく知りたいです!
本記事はこんな疑問を解消します。
本記事の結論
- 政策金利は金融政策で決まる
- 現在は無担保コールレート翌日物金利
- 政策金利は景気を調整する

目次
そもそも政策金利とは?

政策金利とは中央銀行が金融政策によって操作する金利のことで、景気のバランスを保つために調節されます。
政策金利を上げることを『利上げ』政策金利を下げることを『利下げ』と呼び、景気に対しては以下のようにはたらきます。
利上げ
景気の加熱を抑える金融引き締め政策
利下げ
景気を上向かせるための金融緩和政策
画像:政策金利と景気
現在、政策金利として操作されている金利は『無担保コールレート翌日物金利』がメインです。
これを含めて日本で金融政策によって調節される金利は主に3つあります。
操作される金利
- 日銀当座預金金利
- 公定歩合
- 無担保コール翌日物金利
それぞれ解説しますね。
①:日銀当座預金金利
日本銀行は日本銀行当座預金の中にある金利を操作することで政策金利を調整します。
日本銀行当座預金
金融機関が日本銀行に開設している当座預金のことで、略して日銀当座預金と呼ばれる。金融機関同士や日銀、国との決済手段などに利用される。
私たち国民が銀行に口座を持つように、民間銀行も日銀に預金口座を持っています。
この日銀当座預金の中のお金の金利を操作するのとで金融機関の貸し出しに対する方向性に変化させるのです。
2016年に日本銀行は、この日銀当座預金の1部にマイナスの金利をつけるマイナス金利政策を導入しました。
②:公定歩合
公定歩合は『基準貸付利率』と呼ばれ、日銀が民間の金融機関に直接資金を貸し出すときの基準金利の役割をになっています。
1994年の金利の自由化完了以降には公定歩合は金融市場調節の誘導目標としてその上限の役割を示すことになりました。
金利の自由化
金融機関が預金金利などを自由に決められるようにした規制緩和のこと。
日本では1970年代以降金利の自由化が進み1994年に完了しました。
③:無担保コール翌日金利
金利の自由化が完了した現代では、政策金利とは主に無担保コール翌日物にかかる金利のことを指します。
無担保コールレート翌日物
金融機関同士が資金を借りたり貸したりするコール市場の取引で、担保なしで借りて翌営業日に返済する取引
無担保コールレート翌日物は超短期の金融機関同士の貸し借りをおこなうもので、この金利が下がると金融市場でのお金の流通が拡大します。
金利の自由化によって政策金利は公定歩合から無担保コールレート翌日物にかかる金利がメインとなっています。

金融政策の推移

それでは次に日本の金融政策の変遷と、政策金利がどのように変化してきたかを見てみましょう。
金融政策の推移
- 公定歩合の調節
- 無担保コールレート翌日物の調節
- 日銀当座預金残高の調節
- マネタリーベースの調節
- 日銀当座預金金利の調整
順番に解説しますね。
①:公定歩合の調節
1994年の金利の自由化までは公定歩合が預金金利などの金利全般に連動しており、日本銀行は公定歩合を変更することで金融の緩和や引締めを実施していました。
しかし1994年に金利の自由化が完了してからはこの連動性はなくなり、変わって短期市場の金利を誘導することで金融政策をおこなうことになります。
画像:公定歩合の長期推移
②:無担保コールレート翌日物の調節
1995年以降は短期市場金利を誘導するオペレーション(公開市場操作)を通じて金融市場調節を行うようになります。
1998年には、無担保コールレート翌日物の誘導目標を具体的に定めるようになりました。
1999年から2000年にかけては、ゼロ金利政策が実施されて、無担保コールレート翌日物をゼロに近づけるように誘導する金融政策が採用されました。
画像:無担保コールレート翌日物の長期推移
③:日銀当座預金残高の調節
ゼロ金利政策を実施しても日本の長引くデフレ経済を上向かせることができませんでした。
そこで2001年に量的緩和政策が開始され金融政策の手段が日本銀行当座預金残高を操作する方法に変更されました。
④:マネタリーベースの調節
2006年には量的緩和が解除されて、再び金融政策は無担保コールレート翌日物に変更されます。
しかしリーマンショックや東日本大震災を経て日本国内は円高株安が進み、ふたたび金利の操作だけでは立ち行かなくなりました。
そこで第二次安倍内閣によって取られた経済政策アベノミクスによって量的質的金融緩和が導入されました。
これによってマネタリーベースの調節が金融政策として採用されたのです。
⑤:日銀当座預金金利の調整
さらに量的質的金融緩和の効果を高めるために日銀当座預金残高にかかる金利の1部にマイナスの金利を課す『マイナス金利政策』が導入されました。
マイナス金利は日銀当座預金の政策金利残高にー0.1%の金利を課すことで、民間銀行に市場への貸し出しを増やすように促すために導入されました。

政策金利と国債金利

それでは次に政策金利と国債金利の関係について解説します。
国債金利とは国債に投資した際に受けとれる金利のことで、短期金利・中期金利・長期金利の3つの期間に分けられます。
一般的に政策金利と国債金利の関係は以下の経路をたどって変化します。
政策金利と国債金利の関係
- 政策金利が下がる↓
- 国債価格が上がる↑
- 国債金利が下がる↓
①:政策金利が下がれば国債金利への投資の魅力が増して国債は買われる方向にむかいます。
②:結果として国債の価格は上がります。
③:国債価格が上がれば、上がった価格分が金利から差し引かれますから、国債金利は下がるのです。
名目金利と実質金利の違い

それでは次に、名目金利と実質金利のちがいについて解説します。
マクロ経済で名目と実質のちがいをシンプルに言えば物価上昇率(インフレ率)を加味するかどうかという1点です。
金利とインフレ率の期間を合わせる必要があるため、実質金利の計算には予想インフレ率(BEI)を使用します。
実質金利
名目金利−予想インフレ率
例えば、あなたが銀行に100万円を預けた時に金利が1%だったとすると翌年には101万円として受け取ることができます。
一方でこの1年間で物価が2%上昇したとします。
あなたは銀行への預金で1万円金利が上乗せして受けとることができましたが、インフレによってお金の価値が2万円分さがっているため、実質は1万円の損失を被っているのです。
この場合、名目金利1%で実質金利−1%ということです。

まとめ
本記事のまとめ
- 政策金利は金融政策によって決まる
- 景気を上向かせる時は政策金利を引き下げ、抑える時は引き上げる
- 現在の政策金利は無担保コールレート翌日物
- マイナス金利は日銀当座預金の1部にかかる
- 政策金利は国債金利と連動し、国債価格と反対方向に動く
