・そもそも必要ですか?
・財政再建の方法をわかりやすく知りたいです!
本記事はこんな疑問を解消します。
本記事の結論
- 財政再建とは国家財政を建て直す事
- 財政再建は必要
- 財政再建の方法は経済成長をする事
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目次
そもそも財政再建とは?
財政再建とは財政健全化とも呼び、悪化している国家の財政を改善させることです。
つまり国の財政を下記のように黒字にするということです。
国の収入 − 国の支出 = 黒字
歳入と歳出
国家財政の収支とは具体的に歳入(税収などの収入)から歳出(社会保障費)を引いたものです。
①:歳入(国の収入)
歳入は主に次の2つです。
歳入
- 税収
- 公債発行で調達した資金
歳入のおおまかな内訳は上記のとおりで、その他には使用料・手数料・交付金・負担金・公債通貨発行益などがあります。
②:歳出
一方で歳出(政府の支出)には、多くの種類があり、例えば下記のようなものです。
社会保障・社会福祉・公共事業・教育・軍事、公務員の人件費・公債の償還費(国債費)
歳出は国を運営するために必要となる経費といえます。
日本の財政状況
国の財政収支の赤字が深刻化してしまえばギリシャのような財政破綻もありえます。
さて、日本の財政収支の状況は、果たして財政危機なのでしょうか?
結論からいえば、それほど危機的とはいえません。
その理由をわかりやすく解説します。
財政収支の推移
現代の日本は少子高齢化が進み、社会保障費などの増加が歳出を拡大させています。
日本政府は国債を発行して借り入れを増やし、税収では足りない予算を補っているです。
出典:nippon.com
これは、日本政府の歳入(税収・国債発行額)と歳出(一般会計歳出)の推移です。
これだけ見ると、歳出と国債発行が増えて大変なことのように思ってしまいます。
しかし、この国債発行残高の増加だけを危険視していては、問題の本質を見誤ってしまいます。
なぜなら、政府が発行した日本国債を持っているのは外国ではなく、ほとんど日本国内の金融機関が持っているからです。
例えば、日本国債のほとんどが外国に買われているのであれば少し危険であることは理解できるでしょう。
しかし、日本国債は日本国内で、しかもすべて円建てで消化されているのです。
これは、財務省もホームページ上で認めています。
また、『国の借金』といわれる国債発行額に関しての誤解をさらに詳しく解説した記事はこちら🔻
プライマリーバランスとは
プライマリーバランスを簡単に言えば純粋な収入と費用のバランスです。
ここでは日本政府が財政再建の目標と位置づけめいるプライマリーバランスの黒字化に関して簡単に解説します。
『純粋な収入と費用』は、前述した『歳入と歳出』とやや異なります。
【収入】
全収入から国債発行額を差し引いた純粋な金額
【費用】
国債返済額を除いた国が払う純粋な費用
この単年度の純粋な収入と費用のバランスのことをプライマリーバランスといいます。
そして国家財政において収入>費用になることをプライマリーバランスの黒字化といいます。
政府は2025年までにプライマリーバランスの黒字化を達成させるために、税収を増やして歳出を削ろうとしているのです。
こちらは、日本のプライマリーバランスの推移です。
日本のプライマリーバランスは平成4年を境に赤字に転落しました。
長引くデフレ不況の中、リーマンショックを契機に大きく赤字は膨らみ、アベノミクス開始によって少しづつ改善して現在に至ります。
これらから分かることは景気が悪化するとプライマリーバランスは赤字になってしまうということです。
財政再建の方法
それでは本題です。
どうやったら、財政再建(プライマリーバランスの黒字化)ができるのでしょうか。
答えは簡単で経済が成長することこれだけです。
つまり、日本の国内総生産(GDP)を拡大させるのです。
【補足記事】▶︎GDP(国内総生産)とは?【わかりやすく解説】
デフレ不況下では税収が減ってしまうことでプライマリーバランスは悪化しますから、税収を増やしたいがために無闇に増税をすれば、かえって国内消費が減退して税収が減ってしまうのです。
なぜなら税収は名目GDPに税率をかけたものだからです。
次にこの根拠を解説します。
ドーマーの定理
ここで、ドーマーの定理(ドーマー条件)を紹介します。
ドーマーの定理は、「ドーマーの条件」とも呼ばれ、1940年代にロシア系アメリカ人の経済学者エブセイ・ドーマーによって提唱された、財政赤字の維持可能性に関する定理(条件)のことをいいます。-中略-日本においては、名目GDP成長率が名目公債利子率を上回れば、財政赤字は維持可能であるという概念になっています。
出典 i finance
これを簡単に表現すれば、あなたがもし多額の借金を抱えているとして10%の金利と分割した元本を支払っているとします。
一方で、あなたは仕事で昇格して、年収が返済金を超える金額がアップしました。しかもあなたの昇格は毎年用意されていて、これからもあなたの年収には利回りがついてきます。
このような状況では、あなたの借金返済にかかる利子をあなたの年収の伸びが超えた時点で自己破産の可能性は理論上はなくなります。
国家財政で言えば、名目GDP成長率が国債金利より上回っていれば、財政再建は成功しているという事です。
しかし、ヒトと国家財政を語る上で借金の考え方には注意点があります。
私たちヒトは必ず寿命がありますので、当然として完済への期限と義務があります。ですので、先ほどの例えで、理論上は借金の負担を失くせたとしてもどこまでも借金をする事は出来ません。
しかし、国家には寿命がありません。
実は、国家は借金を完済する必要はないのです。
そんなの無茶苦茶だと指摘を受けそうですが、日本政府が国債を発行して、国民からお金を借りるようになってから、これを完済した事は今までにありません。
つまり、このドーマー条件をクリア出来ていれば、財政破綻のリスクはなく健全化は成功しているとも言えるのです。
財政再建への固執は逆効果
ここまで家計の例えも挟みながら説明してきましたが、国家財政においてプライマリーバランスを黒字化することは重要なのでしょうか?
実はプライマリーバランスの黒字化に固執してしまうデメリットも存在します。
①:支出を削ると景気を悪化させる
②:増税すると消費が抑制され景気が停滞する
③:不況は税収を減らす
このように、経済成長よりもプライマリーバランスの黒字化を優先し、増税などの誤った政策を行ってしまうと、かえって景気が悪くなり財政再建から離れてしまうのです。
不景気時においては、税収を増やすために行うことさ増税ではなく減税なのです。
税収はシンプルに表すと名目GDP×税率です。
景気が冷え込むと名目GDPは縮小してしまうので、税収は減ります。
つまり、税収を増やす事に固執して増税を実施したり、財政支出を削減する緊縮財政は、極めて誤った政策であると言うことが出来ます。
つまりデフレ期に緊縮財政を行うと、さらに景気が冷え込み、かえってプライマリーバランスの赤字を拡大させてしまうのです。
名目GDP成長率を高める方法
名目GDPを高めるにどうすればいいのでしょうか?
①:金融政策でマイルドなインフレに持って行く事
インフレに向かうことで消費や投資は活発化してGDPが高まり、結果として税収が増えます。
②:積極的な財政政策によって金融政策の効果を最大に高める事
歳入を増やそうとして増税、すなわち緊縮財政を行ってしまえば、消費が減速してGDPが減ります。税収は減りますし、名目GDP成長率が低下してしまいますので、国債の金利が成長率を上回ってしまいます。
この①と②がしっかりと同じ方向を向いて行われている事が重要です。
アベノミクスで大胆な金融緩和政策をおこなった第二次安倍内閣は、金融政策においては一定の成果をあげました。しかし、財政政策がまったく違った方向を向いてしまい、消費増税をはじめとする大緊縮政策をおなってしまいました。
これはアクセルを踏みながらブレーキを踏んでいるようなものです。
繰り返しとなりますが経済成長こそが、財政再建の1番の近道であり解なのです。
プライマリーバランスを気にするあまりに増税をしたり、政府支出を削ったりすれば、不況が悪化して日本の経済は危機的状況に陥ってしまうのです。
まとめ
それでは本記事の内容をまとめます。
①:財政再建とは、国家財政の収支を安定した状態に導くこと
②:純粋な国家財政の収支を『プライマリーバランス(基礎的財政収支)』という
③:プライマリーバランスを黒字化するには増税ではなく経済成長
④:名目経済成長率が公債の利率を上回れば国家財政は安定化することをドーマーの定理という
⑤:日本政府のプライマリーバランスを黒字化するには、金融政策と財政支出を拡大して経済成長させること