・資金の調達は増税しかないの?
・国家財政や安全保障の現状についてわかりやすく知りたいです!
本記事の結論
- 日本の防衛費拡大は必要
- 国債発行での資金調達が先決
目次
そもそも防衛費とは?
防衛費とは国を守るために政府が歳出する費用のことで、外国では軍事費と呼ばれています。
防衛費は主に自衛隊員の人件費や装備品の購入に使われます。
近年まで日本では防衛費はGDP(国内総生産)の1%程度に抑えるという暗黙のルールがありました。
引用元:防衛省ホームページ
これは日本の防衛費の推移をグラフ化したものです。
平成25年から開始された経済政策『アベノミクス』によって少しつづ増加して令和3年度には5.1兆円となっています。
それでは防衛費の内訳を簡単に解説します。
防衛費の内訳
下記は令和3年度の防衛予算の内訳をカテゴリ別で示したものです。
引用元:防衛省ホームページ
ざっくりとまとめてみますね。(※その他は割愛)
使途カテゴリ
- 人件・食糧費(約43%)
- 維持費など(約23%)
- 装備品の購入費(約18%)
- 基地の対策経費(約9%)
機関別カテゴリ
- 陸上自衛隊(約36%)
- 海上自衛隊(約26%)
- 航空自衛隊(約22%)
経費別カテゴリ
- 人件・食糧費(約43%)
- 歳出化経費(約38%)
- 一般物件費(約19%)
防衛費の拡大は必要か?
結論からいえば今の日本が防衛力を強化することは必要です。
その理由は大きく3つあります。
防衛力が必要な理由
- 独裁国家の存在
- 極東軍事バランスの崩壊
- 高まる台湾有事の可能性
それぞれ解説しますね。
①:独裁国家の存在
ひとつ目の理由は、日本の近くに3つの独裁軍事国家が存在することです。
具体的には中国・ロシア・北朝鮮の3国です。
ウラジーミル・プーチンが率いるロシアは2022年の2月にウクライナの侵攻を実施して、民間人をも見境なく虐殺しています。
画像:ウラジーミル・プーチン大統領
また北朝鮮の金正恩は連日にわたってミサイルの発射を実施しており、日本でもJアラートが鳴る事態が発生しています。
そして日本の最大の脅威は中国です。
中国共産党の習近平は2022年10月に開会された共産党大会によって、総書記としては異例の3期目が決定したことで独裁的な権力を強化しました。
共産党大会で強制退去させられた元胡錦濤国家主席
この軍事独裁国家である3国が日本の近隣に存在している以上は、日本の現在の防衛費(GDP1 %)では到底足りない状況なのです。
②:軍事バランスの崩壊
ふたつ目の理由は東アジアでの軍事バランスが大きく崩れていることです。
これは2000年以降の中国の軍事費の推移をグラフ化したものです。
中国の軍事費は2022年には26兆円となり、日本の防衛費の約5倍にまで膨れあがりました。
近年の日本も防衛費を増やしてきたとはいえ、中国の増長とは比べものになりません。
また北朝鮮は核実験を止める気配はなく、弾道ミサイルに搭載が可能な核の小型化にそろそろ成功すると言われています。
このような東アジアの状況下で、かつての経済的な繁栄によって強化されていた日本の国力は、相対的に大きく低下していったのです。
③:台湾有事の可能性
3つめの理由は、中国が台湾への武力による侵攻を示唆していることです。
中国は台湾を『核心的利益』と位置づけており、何としても手に入れたい領土の1つとしています。
核心的利益
中国における国家主権や安全保障、領土、自国の開発などを追及するための国家利益のこと。日本の尖閣諸島も含まれている。
中国が台湾に軍事的な侵攻をおこなえば地理的に日本も戦争に巻き込まれることとなります。
安倍元首相が暗殺される前に、『台湾有事は日本有事であり日米同盟の有事である』と警鐘を鳴らしていたのはこのような情勢のことを指していたのです。
このような状況下では、防衛費の拡大は日本の安全保障にとって喫緊の課題なのです。
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防衛費拡大の方法
結論からいえば増税を実施する前にやるべきことがあります。
それは防衛国債の発行によって防衛費の資金を調達することです。
これには押さえておきたいマクロ経済的な視点からの前提が2つあります。
2つの前提
- 増税は緊縮財政である
- 国債発行は積極財政である
それぞれ解説しますね。
①:増税=緊縮財政
増税は国民からお金を回収する財政政策であり景気を停滞させます。
このような財政政策を緊縮財政と呼びます。
経済が成長軌道に乗っていない段階での緊縮財政は国内景気の停滞を招き、さらに国力は低下してしまうのです。
つまり増税による防衛費の捻出は、経済が成長軌道に乗ってそれでも資金がたりない場合の最終手段としてとっておかなければいけません。
ですから増税による防衛費の資金調達を行うことは順番が違うと言えるのです。
②:国債発行=積極財政
国債発行による財政の支出は、国内の資金を吸い上げる緊縮財政とは反対に『積極財政』と呼ばれています。
なぜなら日本政府が発行する国債によって防衛費をまかなうことは、国内の防衛産業などに日本政府が資金を供給することだからです。
現在の日本は国債の発行がまだまだ可能です。
それは日本の国債は9割が日本国内で消化されているからです。
つまり日本政府が発行する国債を買っているほとんどは日本国民なのです。
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:結論
防衛費の財源の結論をいえば『防衛国債を発行して積極財政をおこなうことで防衛力を高める一方で経済も成長させる』ということです。
国内経済を成長軌道に乗せるためには積極的な金融緩和政策を前提として積極財政が必要になります。
成長軌道に乗り切れていない経済において増税などの緊縮財政を実施してしまえば国内経済が停滞して安全保障上にもマイナスとなってしまいます。
反対に積極財政によって経済が成長すれば名目GDPが増えて結果的に税収は増えることになります。
ですから、防衛費拡大の財源の確保を増税ありきで考えてしまうことは極めて安全保障上の危険性をはらんでおり、まずは国債を発行することで資金を調達することが重要なのです。
防衛増税の現状
2022年12月現在、自由民主党内でも大きな議論となった防衛費の財源問題は、増税時期の決定が先延ばしになったものの増税を財源とする方向で決定しました。
岸田首相 防衛費増税の実施時期 来年意見集約図れるか焦点
岸田総理大臣は記者会見で、「戦後の安全保障政策を大きく転換するものだ。防衛力強化の取り組みを加速していく」と述べたうえで、5年後の2027年度にはGDPの2%に達する防衛費の増額を目指す方針を重ねて示しました。
不足する財源は法人税、所得税、たばこ税の3つの税目の増税で賄う方針で、岸田総理大臣は、「議論のプロセスに問題があったとは思っていない。今を生きるわれわれが将来世代への責任として対応すべきものだ」と理解を求めました。
ただ、増税を実施する時期は「2024年以降の適切な時期」とするにとどめ、来年改めて与党で議論して決める方針です。
現時点で決定している防衛増税の項目は3つです。
増税の項目
- 法人税
- 所得税
- たばこ税
実施の時期は2024年以降の適切な時期となっています。
自民党内では安倍派(清和会)を中心に大きな反対が巻き起こっており、政局に発展する可能性もありますが現状での防衛国債の発行による資金調達は厳しい見通しとなっています。
まとめ
本記事のまとめ
- 日本の防衛費の拡大は必須事項
- 防衛費の財源は原則として国債発行でまかなう
- 防衛増税の時期は2024年以降の適切な時期とされている