・国の借金は誰に借りてる?
・日本は財政破綻しないの?
・借金問題の解決法は?
本記事はこんな疑問を解消します。
本記事の結論
・『国の借金』の貸し手は日本国民
・借金はあるが資産もある
・財政再建の鍵は経済成長
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目次
そもそも国の借金とは?
結論からいえば国の借金とは、日本政府が発行する国債のこと指します。
国債とは?
国債(こくさい)は、中央政府が発行する公債のことで、これによって国家の運営に必要な資金を調達する。
下記はいわゆる『国の借金』についての日経新聞ニュースから引用です。
財務省は10日、国債と借入金、政府短期証券を合計したいわゆる「国の借金」が6月末時点で1255兆1932億円だったと発表した。3月末から13.9兆円増え、過去最多を更新した。国民1人あたりで単純計算すると、初めて1000万円を超えた。
債務の膨張に歯止めがかからず、金利上昇に弱い財政構造になっている。
日本政府が発行した国債は、民間の金融機関や投資家などにに購入してもらうことで資金を調達します。
日本政府が資金の調達のために発行した国債は、金利を上乗せして金融機関に返済しなければいけないため『国の借金』と呼んでいるわけです。
『国の借金』の内訳は、さらに詳しく下記の画像(財務省ホームページより引用)に記されています。
内訳は4つの名称がありますが、借入金をのぞくすべては政府が発行した国債であり日本政府の債務は日本国債であるといえます。
借金の貸し手
結論からいえば、日本国債の保有者のほとんどは日本国民です。
つまり、日本国債の保有者は9割が日本の国内ということですが、その理由を解説しますね。
画像引用元:令和4年3月時点/財務省ホームページ
ご覧の通りで日本国債の保持者の9割は日銀や日本国内の金融機関、公的基金が占めています。
それは、国内の銀行をはじめとする金融機関が日本国債を購入するお金は私たちから預かった預金を運用しているからです。
生命保険も大きな国債保持者の1人ですが、このお金も日本国民が払っている保険料ですね。
意外と知られていませんが、国内の金融機関は私たち日本国民の預金や保険料の一部を日本国債などの資産に変えて運用しています。
これは間接的に、国の借金の貸し手は私たち日本国民ということを示しているのです。
参考
日本国債の保有者と安全性に関しては、財務省もホームページの外国向け意見書にて認めています。
つまり、経済ニュースでよく聞く『国民1人当たり○万円の借金』というフレーズは正確ではありません。
正しくはこうなります。
国の借金
国民1人当たり〇万円を日本政府に貸している
国の資産
実は日本は多くの資産を持っています。
ここからは『国の資産』について、2つの側面から解説します。
2つの資産
- 国内資産
- 対外資産
それぞれ解説しますね。
①:国内資産
実は日本は国内に680兆円の資産を持っています。
これがどのくらいの規模なのかを確認するため、同じ条件で日本の資産と世界第一位の経済大国アメリカ合衆国の資産とを比べてみましょう。
アメリカ合衆国は日本の約4倍のGDP(国内総生産)でありながらも、その国内資産は日本の約半分しかありません。
これだけをとってみても、日本の国内資産はかなり大きいと言って間違いはありません。
②:日本の対外資産
それでは次に、日本が国外にもっている『対外純資産』を見てみましょう。
画像出典:ガベージニュース
実は日本は対外純資産で、411兆円(2021年時点)で堂々の世界1位なのです。
日本は超お金持ち国家ということができます。
この状態で『日本は借金大国』と言うのは少し無理があるでしょう。
国のバランスシート
それでは、日本政府のバランスシート(貸借対照表)を見て、国の借金について解説します。
このようにバランスシートは左側に資産、右側に負債を明記します。
それでは日本政府のバランスシートを確認してみましょう。
これは、財務省が公表している日本政府のバランスシートに、日本政府の実質的な子会社である日銀のバランスシートを加えたものです。
日本政府が持つ負債は確かに大きいですが、一方で多くの資産も持っていますね。
また日本政府の子会社である日銀が持つ負債は、金利もつかなければ返済する必要もありません。
そして、日銀はその気になれば日本政府の負債である国債を買い取ることもできます。
日本銀行が金融機関がもつ日本国債を買いとることを『買いオペレーション』といわれ、金融緩和政策として実施されます。
実際にこのオペレーションは、2013年から開始された経済政策『アベノミクス』で大規模に実施されました。
結果として日本国債の保有者の5割が日本銀行となったのです。
これらの経緯からも、日本政府が持つ負債だけを声高に叫び危機感を煽るように報道することに疑問を感じます。
この項をまとめるとポイントは2つです。
ポイント
- 日本は負債もあるが資産もある
- 日銀は負債を買い取ることができる
-
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『国の借金』の嘘
財務省や日本のマスコミは、『国の借金が大きすぎて増税をしなければ国家財政が破綻する』といった発信をしていますがこれは大きな間違いです。
いわゆる『国の借金問題』は、国民に増税を受け入れるために発せられた嘘だといっても過言ではありません。
結論から言えば、国の借金返済を返済するための増税は間違っています。
なぜなら、増税は国内の消費を減らして国の税収を低下させて経済停滞を招くからです。
デフレ経済下での増税が、税収を減らしてしまう理由を単純化して解説します。
税収とは名目GDPに税率をかけて算出されます。
【補足記事】
しかし、消費税が上がれば国内の消費が抑制されます。
すると、名目GDPの6割は国内消費が構成しているため、消費が減退すればGDP自体が縮小してしまうのです。
結果として、税収も減ってしまうのです。
日本政府の借金とは私たち個人の借金と国の借金とは少し性質が異なります。
人間はいずれ死を迎えますのでそれまでに借金を完済しなければいけませんが、国には基本的に完済の期限がありません。
シンプルに表現すれば、国の借金は完済する必要がないのです。
無責任な発言に聞こえますが、財政再建ばかりにとらわれて経済を衰退させてしまえば、未来の日本国民にたいして無責任なのです。
国の借金問題の解決法
結論からいえば国の借金問題を解決する方法は経済を成長させることです。
もう少し踏み込んでいえば、名目GDPを成長させ、名目GDP成長率が国債金利(政府にとっての利払費)を上回ることで財政再建は完了するのです。
経済成長率が国債金利を上回ることで財政が安定することを、公債のドーマー条件といいます。
個人の家計に例えて考えてみましょう。
あなたが月々3万円の借金返済(利払い1万円)があるとします。
その借金の利払い1万円よりも、あなたの出世によって給料の増加が月々2万円になれば、その借金は実質的な収支としては黒字転換可能です。
それでは、どうやって名目GDPを成長軌道に持っていけばいいのでしょうか?
ポイントは2つあります。
経済を成長させるポイント
- 適切な金融政策
- 適切な財政政策
経済を成長させるためには①日本銀行による適切な金融政策が不可欠です。
日本銀行が金融政策によって、マネタリーベースの量を調節することで、マイルドなインフレーションを形成させます。
インフレターゲット政策によって雇用を最大化させることで、マクロ経済に好循環をつくるのです。
これをリフレ政策といいます。
GDPを拡大するするために、リフレーション政策と同時におこなうことは②日本政府による適切な財政政策です。
これによって、日銀が発行したマネタリーベース(通貨供給量)を国内に再分配します。
そうすることで国内の消費は喚起され、金融政策の効果が最大化されるのです。
2013年から開始されたアベノミクスも、金融政策の転換には成功し雇用が拡大したものの、財政政策では消費税の増税など緊縮財政をおこなって、不完全燃焼といった結果でした。
国が破綻しない理由
ここまでさまざまな角度から国の借金について検証してきました。
とはいえ、なんとなく納得ができなかった方もいるでしょう。
そんな方に、日本の財政状況について見るべきポイントをお伝えします。
それは日本の国債金利です。
もし本当に日本政府が財政破綻の危機に瀕しているのであれば、日本国債の金利は上昇します。
なぜなら、国の財政破綻の可能性が高まれば日本国債がリスク資産となるからです。
財政危機時の金利の上昇は、ギリシャ危機でも見られた現象であり、マクロ経済の観点からは当然として起こることです。
例えば2012年のギリシャ破綻が現実味を帯びてきた頃、ギリシャの10年もの国債(長期金利)は35%を超える水準まで暴騰しました。
さて、日本国債の今の金利はどうでしょう。
10年もの国債金利(長期金利)は0.189%です。(2022年8月現在)
この金利だけを見ても世界の市場は、日本国債を低金利でも運用したい安全資産としてとらえていることがわかります。
まとめ
それでは本記事をまとめてみます。
本記事のまとめ
- 国の借金とは政府が発行する国債
- 国債の保持者の9割は日本国内
- 日本は世界一の対外純資産保有国
- 財政問題の解決法は経済成長
- 日本国債の金利は低く破綻リスクは低い