・マネーストックとは?
・マネタリーベースとの違いは?
マネーストックについてわかりやすく知りたいです!
本記事はこんな疑問を解消します。
メモ
※2008年までマネーストックは『マネーサプライ』と呼ばれていましたが、現在はマネーストックが主流です。
本記事の結論
- マネーストックは銀行から供給されているお金の総量
-
景気が拡大するとマネーストックは増加する
- マネタリーベースを拡大するとマネーストックが増加する
目次
マネーストックとは?
マネーストックとは
マネーストックとは「金融部門から経済全体に供給されている通貨の総量」のことです。
日本銀行ホームページより引用
マネーストックを単純化していえば民間銀行から世の中に出回っているお金のことです。
それではマネーストックの4つの項目について少し詳しく見ていきましょう。
マネーストックの内訳
マネーストックは、集計の範囲によって4つの区分に分かれます。
マネーストックの区分
- M1
- M2
- M3
- 広義流動性
少し詳しくみていきましょう。
M1(エムワン)
M1
現金+預金
M1は、1番狭い範囲の通貨量を表しています。
現金通貨とは日本銀行が発行したお金とその流通高のことで、預金通貨とは、私たちが銀行に預けている預金のことを指します。
内訳は下記のようにまとめられます。
現金
日本銀行券発行高+貨幣流通高
預金
要求払預金(当座、普通、貯蓄、通知、別段、納税準備)-調査対象金融機関保有小切手・手形
M2(エムツー)
M2
M1+準通貨+譲渡性預金(CD)(発行元が国内銀行)
M2とはM1と準通貨の合計のことで、準通貨とは定期預金・据置貯金・定期積金などの現金化しやすい金融資産のことです。
譲渡性預金(CD)
譲渡性預金とは、金融市場で自由に譲渡できる定期預金のこと。一般の定期預金のように譲渡禁止の特約がない。
M3
M1+準通貨+譲渡性預金(CD)(全預金取り扱い機関)
広義流動性
M3+流動性を有する資産
流動性を有する資産
金銭の信託+投資信託+金融債+銀行発行普通社債+金融機関発行CP+国債+外債
M2とM3は、通貨の発行元が国内か海外も含めるかの違いで、M1からM2.3と下がるにつれてマネーの範囲が広がっていきます。
画像引用元:日本銀行ホームページ
これは2022年8月現在に公表されているマネーストックの推移(伸び率)です。
新型コロナウイルス感染拡大による経済停滞の対策として、マネタリーベースを急拡大しているためマネーストックも拡大していることがわかります。
マネタリーベースとの違い
マネーストックとよく混同される指標としてマネタリーベースとよばれる指標があります。
世の中に出回っているお金の合計であるマネーストックに対して、マネタリーベースは世の中に存在するマネーの合計のことを指します。
・マネタリーベース
中央銀行が民間銀行に供給するお金
→世の中に存在するお金の合計(画像のすべての部分)
日銀が発行したすべてのお金(マネタリーベース)のうち、民間銀行を通して世の中に流れたお金をマネーストックと呼び、この2つの関係は図のようにまとめられます。
※日本銀行当座預金とは、日本銀行が取引先の金融機関等から受け入れている当座預金のことです。
日銀当座預金を簡単にいえば、民間銀行にとっての預金口座のことで、その残高は民間銀行にとっての資産となります。
日銀当座預金残高は、まだ世の中に出回っていないためマネーストック統計には含まれません。
一方でマネーストックには民間銀行が持つ国民からの預金が含まれています。
マネーストックと景気
それでは次に『マネーストックと景気の関係』について解説します。
結論から言えば、マネーストックが増えると物価が上昇して景気が上向きます。
参考記事▶︎インフレーションとは?【図解でわかりやすく解説】
なぜなら通貨の流通量(マネーストック)が増えれば、企業利益は上がり、賃金が増え、消費が拡大するからです。
政府と日銀はマネーストックを増やすために、金融政策と財政政策を実施するのです。
参考記事▶︎【金融政策とは?】わかりやすく解説
ただ、マネーストック・マネタリーベース・物価の連動性には批判的な意見もあります。
それらの批判(懐疑的)な意見を大きく2つわけて検証します。
批判①
マネタリーベースを増やしてもマネーストックは増えない
批判②
マネーストックが増えても物価は上がらない
この批判を一つづつ検証します。
批判①:マネタリーベースを増やしてもマネーストックは増えない
この批判は、『ただマネタリーベースを増やしたところで民間銀行が貸し出しを増やさなければ、マネーストックは増えない』ということです。
シンプルに答えると、ゆっくりと増えます。
たしかにマネタリーベースの拡大をすばやくマネーストックの拡大につなげるためには、補助的な政策も必要になります。
たとえば近年実施されたものは、黒田日銀によって導入されたマイナス金利政策です。
マイナス金利政策は、日銀当座預金の一部(画像の政策金利残高)にマイナスの金利をつけることで、銀行が民間への貸し出しを増やす催促を狙った政策です。
民間の銀行が日銀当座預金にお金を預けているお金の一部にマイナスの金利をつけることで、銀行がお金を貸し出しに回さないと損をする環境を作ったのです。
一般的にマネタリーベースの拡大がマネーストックの拡大に向かうにはタイムラグがあるため、マイナス金利政策のような補完的な金融財政政策が必要になるのです。
出典:https://elite-lane.com/
これは、マネタリーベースとマネーストックの推移をグラフ化したものです。
赤でマーキングした箇所はアベノミクスによる金融政策が開始された時期です。
ここから急速にマネタリーベースは拡大し、それを追いかけるようにゆるやかにマネーストックが拡大していることがわかります。
このようにマネタリーベースを拡大すればマネーストックも増えていきますが、増え方が比例するわけではなくタイムラグがあります。
ですから、マネタリーベースの拡大を効果的にする補完的措置も必要です。
批判②:マネーストックが増えても物価は上がらない
この批判は、『マネーストックが増えても預金だけだけが増えていけば消費が拡大しないために物価上昇にはつながらない』という意見です。
結論から言えば、『物価が上昇するまで財政支出を拡大すればいいだけ』です。
マネーストックには預金も含まれていますから、この意見もわかりますが最終的には物価上昇につながります。
例えばこれはコロナ禍で拡大したマネーストックの内訳の推移です。
グラフをみると預金通貨だけが急上昇していることがわかります。
これは日本政府の新型コロナ対策として財政支出したお金が、緊急事態宣言の自粛などによって使い道がなく、預金が増えてしまった極めて異端な現象です。
ただ、新型コロナウイルス感染拡大による消費の抑制は極めて異例のケースだけに、逆を言えば、新型コロナウイルスが収束した後には、この預金が一気に消費に向かうことも予想されます。
現実にはアフターコロナの予想を資産市場は織り込み株価が上昇しているのです。
平常時に、国内の消費が増えずに預金が増えてしまう場合には、財政政策の支出を拡大してさらに消費を喚起します。
コロナ禍では、緊急事態宣言によって物理的に消費の道がシャットダウンされていますが、平常時であれば政府の財政支出によって消費が改善します。
つまり、マネーストックが拡大しても預金が増えてしまうのであれば、さらに財政支出を拡大して消費を喚起しなければいけないのです。
繰り返しの結論となりますが、マネーストックが物価上昇につながらない場合には、財政支出によって国内の貯蓄から消費に向かう政策をとればいいのです。
マネーストックと株価
マネーストックの伸びは、物価のみならず資産価格も上昇させます。
なぜならインフレとはお金の価値が下がることなので、現金のまま持っていると損をしてしまうからです。
インフレで損をしないために世の中の投資家は、現金を株式や不動産などの資産での運用にシフトするのです。
マネーストックと資産価格の連動は、2013年のアベノミクスや2020年のコロナバブルでも見られた現象です。
おさらいですが、マネーストックを増やすためには2つの経済政策が有効です。
マネーストックを増やす経済政策
- 日本銀行がマネタリーベースを拡大する
- 日本政府が財政支出を拡大する
つまり、この2つの動向を見れば大きな株価や不動産の先ゆきが見えてくるのです。
前述した通り、インフレーションが起これば現金の価値が目減りすることになりす。
このインフレによる現金の目減りリスクを軽減するためには、アフターコロナを見越した資産運用をおすすめします。
資産運用には、政府と日銀が実施している金融財政政策を確認しておくことで、リスクを大きく低減できます。
また、金融資産のなかでも株価は先行指標と呼ばれて、投資家の予想をすぐに織り込む傾向があります。
ですから、下記2つのニュースは必ず抑えておきましょう。
①:日銀政策決定会合の結果
②:国会予算の成立
もしも、マネタリーベースの縮小や緊縮財政の兆候が見えたら、資産の一旦の売り時と考えた方が安全です。
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