本記事ではこんな疑問についてわかりやすくお答えします。
■本記事からわかること
・資本主義のしくみ
・資本主義のメリットとデメリット
・資本主義を活用する方法
目次
資本主義とは?
資本主義
(しほんしゅぎ・英:capitalism)または資本制は、営利目的の個人的所有者によって商業や産業が制御されている、経済的・政治的システム。
Wikipediaより引用
資本主義をとても単純化して表現すれば
資本を元手に自由な経済活動ができるしくみ
といえます。
また資本主義は、自由な取引をおこなう性質上から民主主義や自由主義といわれる政治形態と親和性が高いことが特徴です。
資本主義と対立する考え方に『共産主義』があります。
共産主義を採用している経済圏では、私有の財産を持つことを否定されているため、自由な資本取引ができません。
共産主義について詳しくは、下記リンク記事を参照ください🔻
【参考記事:】▶︎共産主義と社会主義についてはこちら
大きくまとめた資本主義は2つの特徴はこちらです。
・自由に経済活動が可能
・民主主義と相性が良い
資本主義とアダムスミス
資本主義は18世紀にヨーロッパで起こった産業革命によって成立したと考えるのが一般的ですが、資本主義の理論的支柱となったのはアダムスミスの『国富論』です。
画像出典:Wikipedia/アダムスミス
アダム・スミス(Adam Smith、1723年6月5日- 1790年7月17日)は、イギリスの哲学者、倫理学者、経済学者である。スコットランド生まれ。
主著に倫理学書『道徳感情論』(1759年)と経済学書『国富論』(1776年)がある。
Wikipediaより引用
国富論は、学問として初めて経済学が体系化された著書と言われています。
スミスは国富論で、産業革命以前にイギリスで行われていた重商主義政策を批判し、『市場において国家の介入を排除すべき』と主張しました。
重商主義政策とは?
外国貿易を通じて国富の増大を図る政策で、イギリスの国王から特権を受けた一部の大商人を中心として行われていた。
アダムスミスは、市場経済での自由な競争によって生産性が高まり、国富が増大すると考えたのです。
【参考記事】
・資本主義の『見えざる手』
アダムスミスは、個人個人が自分の利益を追求することによって、まるで『見えざる手』に導かれるかのように社会全体の利益にもなっている。
アダムスミスはそんな利己的な市場競争において、世間では受けが良くない『個人の利己心』について着目しました。
見えざる手(みえざるて、英: Invisible Hand)とは、アダム・スミスの『国富論』第4編第2章などに現れる言葉である。
Wikipediaより引用
人間は誰しも、『お金を設けたい』や『豊かな生活がしたい』などの利己心があります。
もちろん利己的であること健全ではあるのですが、利己心が強烈な人は、一般的に倦厭される風潮があります。
しかし、スミスは人間の利己心を肯定しました。
経済活動において、利己心こそが経済活動のエネルギーであり、経済を発展させる原動力であるとしたのです。
たしかに、資本主義下においては下記の構図が成立します。
お金を稼ぐ = 経済を発展させる
= 世の中の為になる
資本主義経済下で利益を得るという事は、市場競争において消費者から支持される事を意味します。
アダムスミスの国富論で使用された見えざる手という表現は、現代においても、使用されています。
ただ勘違いされる事も多いのですが、アダムスミスは市場において好き勝手な利己的行動のすべてが良いと考えていたわけではありません。
自由な市場には、各個人において最低限のモラルと責任を前提としていました。
極端に利己的になり、好き放題をやってしまうと、市場は混乱を招きかねません。
市場において、国家の介入を最小限に抑えながらも経済発展に寄与する自由競争が望ましいとスミスは考えていたのです。
資本主義のメリットとデメリット
資本主義のメリット
世界の大半が採用する資本主義システムですが、メリットは大きく2つあります。
①:自由に経済活動が出来る
②:競争原理の中で発展する
①:自由に経済活動が出来る
資本主義の醍醐味は自由な経済活動が出来ることです。
・自由な市場競争の中で支持を得る(利益を得る)事ができれば、市場の資本を集める事が出来る
・自分のアイデアや努力次第で、富を得られる
・誰でも事業や資産の所有権を持てる(私有財産制)
・自由に買い物が出来る
資本主義は、市場競争の中で支持を得た人が大きな富を得られます。
とはいえこれが『資本主義は格差社会を生み出す元凶』といった批判を浴びること少なくありません。
ただ、自由な経済活動を阻害してしまえば、私たちは好きな商売を始めることや、好きな買い物をする事すらも難しくなってしまいます。
共産主義や社会主義主義では、格差を是正する平等な社会を目指す一方で、計画的な経済活動が基軸となります。
平等を求めるが故に配給制が行われ、自由な買い物やさまざまな経済活動が制限されてしまうのです。
資本主義社会に住む私たち日本国民にとっては当たり前の経済活動ですが、少し前まではそうではない国も多く存在したのです。
②:競争原理が国の発展を促す
市場における自由な競争は、国の発展を促します。
例えばこれらの項目を改善して各企業やお店が自由経済下で競争をします。
・より低価格で
・より高品質で
・より面白いシステムで
・より早く
この競争によって街の消費者から選ばれた人気店は利益(資本)を得る事ができます。
そうなれば、新しい投資に資本を回してまた改善されます。
このような流れで、資本主義における自由経済は、国の発展に寄与していくのです。
資本主義のデメリット
一般的に言われる資本主義のデメリットです。
①:自由な競争による格差の拡大
②:資本家は富や権益を独占する
①:自由な競争による格差の拡大
例えば、自由な競争によって、勝った人は市場の資本(利益)を得ることができます。
しかし、残念ながら負けてしまった人(資本がなくなった人)は倒産や廃業で市場から撤退を余儀なくされます。
自由に経済活動をおこなうことは、当然としてリスクも伴いますから格差の拡大につながります。
また、資本主義下では資本を持つ方が有利になります。
多くの資本があれば、多くの投資を行えますから、市場の競争では当然有利になるのです。
この資本主義による格差の拡大をデータで証明した人物が、『21世紀の資本』の著者で有名なノーベル経済学賞受賞者であるトマ・ピケティです。
彼は、過去のさまざまな国のデータを集めて、資本主義下では格差が拡大してしまうことを発表したのです。
【参考記事】
②:資本家は富や権益を独占する
このデメリットは、資本主義への批判といったほうが正しいかもしれません。
アンチ資本主義といったかたちで誕生した共産主義から、資本主義には労働者搾取といった批判がなされます。
資本主義では、労働者(雇われる人)は資本家に労働力を搾取されつづけるため、共産主義を採用して資本家から富を奪い、労働者に分配するということです。
【補足記事】
需要と供給
資本主義と自由主義市場経済を理解する上では、この需要と供給と均衡価格は極めて重要な為、ここで紹介します。
一般的に自由な市場競争が行われてると、価格は需要と供給によって調整されます。
この調整された価格を均衡価格と呼び、消費者、生産者の双方の取引メリットの最大化する価格と言えます。
✅供給 < 需要 = 価格上昇
✅需要 < 供給 = 価格低下
市場競争下においては、買いたい人(需要)が売りたい人(供給)を上回れば価格は上昇します。
反対に、売りたい人が買いたい人を上回れば価格は低下します。
たとえば近年での、新型コロナウイルス感染拡大によって起こったマスク不足による価格上昇を例に挙げます。
供給(マスク生産量) < 需要(マスクへの需要)
アダムスミスは、市場の見えざる手によってこの均衡価格に導く事で、国富を最大化させられることを説いたのです。
共産主義が採用する計画経済と比較してみましょう。
計画経済では、政府によって生産量や価格が予め決定されます。
政府によって決められ価格は、均衡価格(生産者と消費者の利潤が最大化する価格)を作れませんので、大きな経済的ロスを発生させる事になります。
例えば
✔️買いたい人が十分に買えない
✔️売りたい人が十分な利益を得られない
計画経済や独占市場ができる事によって需要と供給曲線が乱れてしまえば、自由競争による市場の恩恵を受けられずに、国の発展を阻害してしまう事になるのです。
需要と供給と均衡価格の考え方は、物価や労働市場、資産市場などあらゆる面で使われるものですので、押さえておくと良いでしょう。
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資本主義を活用する方法
資本主義経済下に生きる上で資本主義のメリットを十分に活用するためには、資本を作ることが大切です。
それは、いちど大きな資本を作ってしまえばその資本を元手に資本を拡大することで、資本主義経済において優位性を確保できるからです。
資本をつくるする2つのポイントは以下の2つです。
①資産を形成する
②資産を運用する
①:資産を形成する
もしあなたがまとまった資本をもたない場合は、元手となる資産を形成することが必要です。
資本主義の性質上、お金は一つにまとまっている程に大きな力を発揮します。
資産形成は、お金を一つにまとめる作業です。
そうしてまとまったお金を、さらに拡大するために次の資産運用が必要なのです。
【関連記事】
資産形成の始め方【方法やおすすめをわかりやすく解説】
【補足記事】
②:資産を運用する
まとまった資本が準備できれば、次はその資本を元手に資本を拡大するします。
資本を拡大するにはさまざまな方法があります。
・事業を始める
・株式投資で運用する
・外国為替で運用する
・暗号通貨で運用する
注意しておきたいことは、これらの運用は資本が大きければ大きいほどに有利に活用できます。
まとまった資本ができたなら資本主義のメリットをフル活用して、その資産を大きくすることを目指すと良いでしょう。
【関連記事】
【参考記事】
投資信託について
▶▶投資信託のメリットとデメリット【わかりやすく解説】
資本主義の問題を解決する方法
結論から言えば、格差を縮小するためには経済成長が必要です。
最後に、資本主義のデメリットを克服するための、2つの経済政策をご紹介します。
① 金融政策
②財政政策
それでは、一つづつ解説します。
①:金融政策
大きな資本主義のシステム(格差の是正)を解決する方法は、トマ・ピケティ『21世紀の資本』で紹介されている経済成長です。
経済成長をするには、適切な金融政策が必要です。
日本では残念ながら、バブル崩壊以降はこの金融政策に失敗し、大勢の失業者とともに、失われた20年という経済停滞が起こってしまいました。
参考記事:失われた20年とは?
2012年から始まったアベノミクスによる金融拡張政策までこの失敗は続きましたが、アベノミクス以降は雇用が大幅に改善しました。
貧しい人が職を持てるということは、それだけで格差の縮小を意味しています。
【参考記事】
金融政策について
【金融政策とは?】わかりやすく解説
②:財政政策
金融政策と合わせて格差是正に重要な政策は財政政策による富の再分配です。
低所得者層に対して資本の分配することで、直接的に格差を縮小させます。
これにはさまざまな形がありますが、現日本で行われている代表的なものは生活保護給付金があります。
また、トマ・ピケティが著書の中で格差解消のための財政政策としてすすめていることが、税制の累進性強化を世界的にすすめることです。
これは富裕税を導入して、資本によって大きく儲けた人には大きな課税を求める方式です。
確かに、日本の高度経済成長期も所得税の累進性は今よりもはるかに大きいものでした。
しかしこれも残念ながら、日本の再分配政策はバブル崩壊以降はことごとく失敗しています。
むしろ弱者には厳しい政策が次々と実施される事となります。
この最たるものが
消費税率の引き上げをはじめとした緊縮財政
です。
参考記事:なぜ財務省は緊縮政策をやめないのか?
消費税率には、富裕層にも低所得者層にも同じ比率で負担がのしかかります。
これでは、生活費が収入の大部分を占める低所得者層のほうが消費税率の負担が大きいのは当然です。
バブル崩壊後の日本では、資本主義の欠点である格差に対して、効果的な再分配政策が打てていません。
国民皆保険制度など戦後の成功した政策によって、世界各国に比べ格差が少ない方だとは言われていますが、一億総中流といわれた時代からは格差が進んでしまった事は否めないでしょう。
今こそ徹底、かつスピーディな再分配政策が是が非でも必要なのです。